着たいから着る、私らしい着物時間
着物着付け教室 麗和塾 内村圭です。
着物を着て出掛けていると、よく声を掛けていただきます(^^)
「着物、いいですね!」
「今日は何かあるんですか?」
「私も着物を普段に着たいんです」
そんなふうに、着物や着物姿を褒めてくださることもあれば、純粋な興味から質問をしてくださることもあります。
中でも、よく尋ねられるのが、
「今日は、何かあるんですか?」
という質問です。
けれど、実は私、毎回きちんとした「理由」があって着物を着ているわけではありません(^^;
もちろん、お食事会や観劇、お茶会など、着物を着て出掛ける目的がある日もあります。
でも、
「今日は着物を着たいな」
それだけの日もあります。
私は、この「着たい」という気持ちを、案外大切にしています。

着物を着慣れない頃は、周囲の視線が気になってしまう方もいらっしゃるようです。
「何か特別なことがあると思われないかな」
「普段から着物を着ていると、目立つかな」
「どうして今日は着物なの?と聞かれたら、何と答えよう」
そんなことを考えてしまうと、着物を着ることそのものが、少しハードルの高いものになってしまいます。
でも、よく考えてみると、洋服を着るときには、毎回「今日はこの服を着る理由」を誰かに説明しているわけではありませんよね。
「今日はこの色を着たい」
「この服が好きだから」
「今日は少しおしゃれをしたい気分だから」
そんな、自分自身の気持ちで洋服を選ぶことも多いと思います。
着物も、それでいいのではないでしょうか。
「着物を着たい日」
それが、立派な理由なのです。
「この人に会うなら、この着物で行きたい」
「ここへ行くなら、今日は着物がいい」
「この帯を締めたい」
「今日は着物姿の自分で過ごしたい」
そんな小さな気持ちから始まる着物時間があってもいいと思っています。
なぜなら、着物を着ている自分自身が心地よく、気分が良いからです。
もちろん、周囲から褒めていただければ嬉しいものです。
「素敵ですね」
「よくお似合いですね」
「着物っていいですね」
そんな言葉をいただくと、それだけで一日が少し華やぎます。
けれど、誰かに褒めてもらうことを目的にしてしまうと、着物を着ることが他人の評価に左右されてしまいます。
今日は誰かに褒めてもらえるだろうか。
この着物で大丈夫だろうか。
周りからどう見えるだろうか。
そうやって考えすぎると、せっかくの着物時間が緊張する時間になってしまいます。
私は、それよりも、
「私は、この着物を着ると気分がいい」
という自分の感覚を大切にしたいと思っています。
着物は、単なる衣服ではありません。
その日の気分を整えたり、背筋を自然に伸ばしてくれたり、いつもの時間を少し特別なものにしてくれたりします。
だからこそ、着物を着る理由を、周囲が納得できるように準備する必要はないのだと思います。
誰もが納得するような「着物を着る理由」を待っていたら、なかなか着る機会はやってきません。
「今日は予定があるから」
ではなく、
「今日は着物を着たいから」
でもいいのです。
そして不思議なことに、何度か着物を着て出掛けていると、周囲の反応も少しずつ変わってきます。
最初の頃は、
「今日は何があるんですか?」
と聞かれていたのに、二度、三度と着物姿を見てもらううちに、
「あ、この人は着物を着る人なんだ」
と、自然に認識されるようになります。
いわば、暗黙の了解のようなものです(^^)
そうなると、こちらもずいぶん楽になります。
「今日は着物なのですね」と特別視されるのではなく、
「いつものスタイルのひとつ」
として受け止めてもらえるようになるからです。
実際に、普段は着物姿を見慣れている方から、たまに洋服で出掛けると、
「今日は着物じゃないんですね?」
と言われることもあります。
最初は「着物を着ていること」が珍しかったはずなのに、いつの間にか「着物を着ていること」がその人らしい日常の一部になっている。
これは、とても素敵なことだと思います。
着物は、特別な日のためだけにあるものではありません。
もちろん、人生の節目や大切な行事に着る着物も素晴らしいものです。
けれど、それだけではなく、
「今日は着物を着たい」
という自分の気持ちを大切にして、もっと自由に日常へ取り入れてもいい。
週末だけでもいい。
月に一度でもいい。
近所へのお出掛けでもいい。
大切な人に会う日でもいい。
まずは一度、理由を考えすぎずに着物を着てみる。
そして、外へ出てみる。
すると、思っていた以上に周囲は温かく受け止めてくれるかもしれません。
声を掛けられたら、笑顔で「ありがとうございます」と答えればいい。
それ以上の説明をしなくても大丈夫です。
「着物が好きだから着ています」
それだけでも、十分素敵な答えだと思います。
着物を着ることに、誰かの許可や、特別な理由は必要ありません。
「着たいものを着る」
その気持ちを大切にすることは、自分自身を大切にすることにもつながります。
着物を着た自分が心地よい。
着物姿の自分を見ると嬉しい。
いつもの一日が少し彩り豊かになる。
そんな小さな「心地よさ」を積み重ねていくことが、着物を暮らしの中に根付かせていくのではないでしょうか。
着物は、もっと気軽でいい。
「何かあるから着る」のではなく、
「着たいから着る」。
そんな自然な気持ちから、あなたらしい着物生活を始めてみませんか。
着物を着る理由は、案外シンプルです。
「私が着たいから。」
それだけで、十分なのです(^^)


