ーセンスは磨くもの ー  着物を通して育まれる自分らしさ

着物着付け教室  麗和塾  内村圭です。

「才能は開花させるもの。センスは磨くもの。」

この言葉を初めて耳にしたとき、とても深く心に響きました。短い言葉でありながら、人が成長していく過程や努力の大切さを見事に表現しているように感じたからです。

私たちは日常の中で、「あの人はセンスがある」「もともと才能があるからできるのだろう」と感じることがあります。しかし、その人たちの姿をよく見てみると、決して最初からすべてを持っていたわけではないことに気づきます。

実はこの言葉は、人気アニメ『ハイキュー!!』に登場する 及川徹 の言葉として知られています。

作中で及川は、天才と呼ばれる選手たちを目の前にしながらも、努力を重ね、自分自身を磨き続けることの大切さを語っています。その言葉はスポーツの世界だけではなく、仕事や趣味、人生そのものにも通じる普遍的な教えではないでしょうか。

才能というものは、生まれ持った資質として語られることがあります。しかし、その才能も育てなければ花開くことはありません。そしてセンスに至っては、生まれつき備わっているものというよりも、日々の積み重ねによって磨かれていくものなのだと思います。

美しいものを見る。

優れた技術に触れる。

上手な人の姿を観察する。

自分なりに試してみる。

失敗しながらも改善を繰り返す。

こうした積み重ねが少しずつ感性を育て、その人ならではのセンスとなって表れてくるのです。

着物の世界においても、まさに同じことが言えるように感じます。

着物を着始めたばかりの頃は、誰もが試行錯誤の連続です。

どの着物にどの帯を合わせればよいのか分からない。

色の組み合わせに自信が持てない。

衿元がうまく決まらない。

帯結びが思うように仕上がらない。

そんな経験をしながら少しずつ学び、成長していきます。

着物の着こなしに優れた方を見ると、「あの方はセンスがあるから」と思うこともありますが、その背景には数え切れないほどの経験や学びがあるはずです。

何年も着物に触れ続け、多くのコーディネートを試し、さまざまな場面で着物を楽しみながら感性を磨いてきた結果として、その人らしい美しい着こなしが生まれているのです。

着物はとても不思議な装いです。

洋服であればデザインや形が大きく異なりますが、着物は基本的に同じ形をしています。

だからこそ、その人の個性がより鮮明に表れます。

どのような色柄を選ぶのか。

どのような帯を合わせるのか。

帯締めや帯揚げをどう組み合わせるのか。

どのような髪型にするのか。

どのような姿勢で歩くのか。

どのような所作で振る舞うのか。

そうした一つひとつの積み重ねが、その人らしさとなって現れます。

そのため、着物の世界ではよく「着物はごまかしが効かない」と言われます。

どれほど高価な着物を着ていても、姿勢が崩れていたり、所作が雑であったりすると、その魅力は十分に伝わりません。

反対に、決して高価ではない着物であっても、丁寧に着こなし、美しい所作を心掛けている方はとても魅力的に見えます。

着物は単なる衣服ではなく、その人自身を映し出す鏡のような存在なのかもしれません。

だからこそ、着物を学ぶことは、自分自身を磨くことにもつながります。

最初から理想の着姿になれる人はいません。

衿元の角度一つをとっても、納得できるまでには何度も練習が必要です。

帯結びも一度や二度で完璧になるものではありません。

しかし、だからこそ面白さがあります。

昨日より少しきれいに着られた。

以前より短い時間で着付けができた。

新しいコーディネートに挑戦できた。

そんな小さな成長の積み重ねが、大きな喜びにつながっていくのです。

そして着物の楽しみは、経験を重ねるほどに広がっていきます。

自分の好きな色が分かるようになる。

自分に似合う柄が見えてくる。

季節ごとの装いを楽しめるようになる。

お気に入りの帯や小物が増えていく。

少しずつ自分らしい着物の世界が育っていくのです。

最初は一枚の着物から始まったとしても、経験を重ねるうちに「次はこんな着物が欲しい」「この帯を合わせてみたい」と楽しみが広がっていきます。

それは単に物が増えるということではなく、自分自身の感性が豊かになっていく過程でもあります。

センスは一日で身につくものではありません。

一回や二回の経験で完成するものでもありません。

だからこそ、磨き続けることが大切なのです。

良いものに触れ続けること。

学び続けること。

実際に行動すること。

そして継続すること。

この積み重ねが、やがて自分らしいセンスとなって花開いていきます。

着物の世界でも、人生においても、大切なのは完璧を目指すことではなく、昨日の自分より少し成長することです。

理想の着姿を思い描きながら、一歩ずつ近づいていく。その過程そのものが、実は何より豊かな時間なのかもしれません。

「才能は開花させるもの。センスは磨くもの。」

この言葉を胸に、これからも良いものを学び、行動し、継続しながら、自分らしい着物の楽しみ方を深めていきたいと思います。

着物は着るたびに新しい発見を与えてくれます。そして、その積み重ねが感性を育て、自分だけの美しさを形づくってくれます。

行動すること。実践すること。続けること。

その先にこそ、本当の意味で磨かれたセンスと、自分らしい着物姿が待っているのではないでしょうか。