次の扉が見えてくるとき

着物着付け教室  麗和塾  内村圭です。

 

 

「頑張りすぎると、チャンスが入って来ない。」

そんな言葉を、本で読んだことがあります。

一瞬、「どういうことだろう?」と思いました。

頑張ることは、決して悪いことではありません。

目標に向かって努力すること。

自分にできることを精一杯やること。

諦めずに続けること。

どれも、何かを成し遂げるためには大切なことです。

けれど、「頑張る」と「頑張りすぎる」は、少し違うのかもしれません。

頑張りすぎているときの自分を思い返してみると、身体だけではなく、心まで力が入っていることがあります。

「あれもやらなければ」

「これもやっておきたい」

「もっと頑張らなければ」

「こうならなければいけない」

そんな思いが次々と浮かび、知らず知らずのうちに、自分自身を追い立ててしまう。

すると、目の前のことに一生懸命になるあまり、周りが見えなくなってしまうことがあります。

 

 

 

 

実は、チャンスというものは、こちらが必死になって追いかけているときよりも、少し肩の力を抜いたときに、ふっと入ってくることがあるのかもしれません。

「頑張りすぎるとチャンスが入って来ない。」

それは、頑なに気を張っているから。

心の中に余白がなくなっているから。

そう考えると、少し分かるような気がします。

両手いっぱいに荷物を抱えていたら、新しいものを受け取ることはできません。

それと同じように、予定や心配事、義務感や「こうしなければ」という思いで心がいっぱいになっていると、新しくやって来たものに気づく余裕がなくなってしまいます。

だから、ときには力を抜くことも必要なのでしょう。

すべてを手放すという意味ではありません。

努力をやめるわけでもありません。

「今できることは、ここまで」と一度区切る。

深呼吸をする。

少し遠くを見る。

目の前のことだけではなく、周囲にも目を向けてみる。

そうやって心に少し余白をつくると、それまで見えていなかったものが見えてくることがあります。

思いがけない人との出会い。

新しい仕事の話。

以前から気になっていたことへのきっかけ。

あるいは、自分自身が本当にやりたかったこと。

力を抜いたとたんに、世界が開ける。

そんなことも、案外あるのかもしれません。

そして、もうひとつ、心に留めておきたい言葉があります。

「一つの扉が閉まったら、次の扉が開く。」

そして、その次の扉のほうが、良かったりする。

これも、どこかで聞いた言葉です。

私たちは、何かが終わったり、思い通りにならなかったりすると、「失った」と考えてしまいがちです。

続けたかったことが終わってしまった。

楽しみにしていた話がなくなった。

思い描いていた方向へ進めなくなった。

そんなとき、「どうして?」と何度も考えてしまうことがあります。

けれど、閉じた扉ばかりを見つめていても、次の扉は見えてきません。

「終わった」という事実だけではなく、「では、次に何があるのだろう?」と前を向いてみる。

すると、今まで気づかなかった別の可能性が見えてくることがあります。

閉じた扉があったからこそ、別の道へ進むことができた。

あのとき思い通りにならなかったからこそ、今の場所にたどり着けた。

後になって振り返ると、「あの扉が閉じたことは、悪いことではなかったのかもしれない」と思えることがあります。

人生は、いつも自分が計画した通りに進むわけではありません。

だからこそ、すべてを自分の力でコントロールしようとしすぎないことも、大切なのだと思います。

私自身も、

「あれもやらなきゃ。」

「これもやりたい。」

そんなことを考えてしまうことがあります。

やりたいことがあるのは、とても幸せなことです。

興味を持てることがある。

挑戦したいことがある。

もっと良くしたいと思えることがある。

それは、自分の人生を前へ進める力になります。

でも、時間には限りがあります。

一日は誰にとっても24時間。

どれだけやりたいことがあっても、すべてを同時にすることはできません。

だからこそ、「何をするか」だけではなく、「何を今はしないか」を決めることも必要なのかもしれません。

やりたいことを全部抱え込んで、結局どれも中途半端になってしまうより、今の自分にとって本当に大切なことを選び、そこに力を注ぐ。

そして、残りは少し先の自分に託す。

「今はできない」ことと、「永遠にできない」ことは違います。

今は時期ではないだけかもしれません。

そう考えると、少し気持ちが楽になります。

そして、頑張りすぎている自分に気づいたら、時には立ち止まってみる。

「本当に全部、今やらなければいけないのかな?」

「これは私が本当にやりたいことなのかな?」

「少し手放したら、何か新しいものが入ってくるかもしれない」

そんなふうに、自分自身に問いかけてみるのもいいでしょう。

力を抜くことは、怠けることではありません。

むしろ、自分の状態を整え、次の一歩を踏み出すための大切な時間です。

着物を着るときにも、力が入りすぎていると、かえってうまくいかないことがあります。

帯を締めるときも、必要以上に力を入れればよいわけではありません。

身体を整えながら、必要なところに必要な力を使う。

それは、着物だけでなく、日々の暮らしにも通じることなのかもしれません。

何事も「頑張れば頑張るほど良い」というわけではない。

力を入れるところと、抜くところ。

進むところと、待つところ。

つかむものと、手放すもの。

そのバランスが大切なのだと思います。

そして、何かひとつを手放したとき、そこにできた余白には、新しいものが入ってくる可能性があります。

新しい出会いかもしれません。

新しい仕事かもしれません。

新しい学びかもしれません。

今まで知らなかった自分自身かもしれません。

だから、もし今、何かが思い通りにならず、ひとつの扉が閉じたように感じている方がいたら、焦ってその扉を何度も開けようとしなくてもいいのかもしれません。

少し離れて、周りを見てみる。

そして、別の場所にある扉を探してみる。

もしかすると、そこには、今まで想像もしなかった景色が広がっているかもしれません。

人生には、頑張る時期もあります。

踏ん張る時期もあります。

一生懸命、根を張るように努力する時期もあります。

でも、ずっと力を入れ続けていたら疲れてしまいます。

だから、ときには深呼吸をして、肩の力を抜く。

「ここまでよく頑張った」と自分自身を認める。

そして、少し余白をつくる。

その余白が、次のチャンスを迎える場所になるのかもしれません。

「あれもやらなきゃ。」

「これもやりたい。」

そんなふうに焦る自分に、最近は言い聞かせています。

全部を今すぐやらなくてもいい。

閉じた扉を、いつまでも見つめなくてもいい。

少し力を抜いて、前を向いてみよう。

すると、今まで見えなかった次の扉が、思いがけず目の前に現れるかもしれません。

その扉の向こうには、今までよりもっと自分らしい世界が待っているかもしれない。

そう思うと、少し肩の力を抜いて、今日という一日を過ごしてみるのも悪くありません。

頑張ることも大切。

でも、力を抜くことも大切。

人生は、その両方があってこそ、しなやかに前へ進んでいけるのではないでしょうか。

と、自分に言い聞かせるこの頃です。