分母を豊かにすると、着物の楽しみ方が広がる
着物着付け教室 麗和塾 内村圭です。
「願望や目標が分母で、現実に叶ったものが分子」
そんな考え方を耳にすることがあります。
たとえば、私たちの中に「こうなりたい」「こんなことをしてみたい」という願望や目標がたくさんあれば、その中から実際に叶うことも増えていきます。
分母が大きくなれば、それに伴って分子も増えていく。
そう考えると、人生の中で「できた」「叶った」「楽しかった」と感じられる瞬間も、自然と増えていくのかもしれません。
これは、着物にも当てはめて考えることができそうです。
着物や帯、小物を「分母」、そこから生まれるコーディネートや着物でのお出掛けを「分子」だと考えてみましょう。

一枚の着物に一本の帯だけでは、どうしてもコーディネートの幅は限られてしまいます。
ところが、同じ着物に違う帯を合わせたり、帯締めや帯揚げを変えたりすると、驚くほど印象が変わります。
さらに、季節や出掛ける場所、会う人、その日の気分によって組み合わせを変えていけば、一枚の着物から何通りもの楽しみが生まれてきます。
「今日はどの帯にしよう?」
「この帯締めなら、いつもより少し粋な雰囲気になりそう」
「帯揚げを変えたら、顔まわりが明るくなった」
そんな小さな発見も、着物を楽しむ喜びのひとつです。
つまり、着物をたくさん持っていることだけが、着物生活を豊かにするわけではありません。
大切なのは、持っているものをどれだけ活かせるかということです。
もちろん、着物や帯が増えれば、組み合わせの可能性は広がります。
しかし、だからといって、闇雲に買い足せばよいというものでもありません。
「素敵だから買う」
「安かったから買う」
「いつか着るかもしれないから取っておく」
そんなふうに増やしてしまうと、気がつけばタンスの中にはたくさんの着物があるのに、「何をどう合わせたらいいのかわからない」ということにもなりかねません。
着物は、一枚一枚に個性があります。
色、柄、素材、季節感、格。
そして、自分自身の年齢や雰囲気、体型、ライフスタイルとの相性もあります。
だからこそ、数を増やすこと以上に大切なのは、「自分に似合うもの」「自分が活かせるもの」「実際の暮らしに取り入れやすいもの」を見極めることなのです。
では、「自分を活かせる着物」とは、どんな着物なのでしょうか。
「似合う着物」とは、どういうものなのでしょうか。
そして、「取り入れやすい着物」とは、どのようなものなのでしょうか。
これは、単純に流行しているものや、高価なものを選べばよいということではありません。
自分の好きな色や柄はもちろん、顔映りや全体の雰囲気、手持ちの帯との相性、着ていく場所、季節、そして何より「自分がその着物を着たときに心地よいか」ということも大切です。
せっかく購入した着物でも、合わせる帯がない。
着ていく場所がない。
着付けが大変で、結局着なくなってしまう。
そんな状態では、どれほど素敵な着物でも、その魅力を十分に発揮することができません。
反対に、特別に高価なものでなくても、「これなら気軽に着られる」「この帯と合わせるのが好き」「この組み合わせなら出掛けたくなる」と思える着物があれば、自然と袖を通す回数が増えていきます。
着物は、着れば着るほど身近な存在になります。
最初は時間がかかっていた着付けも、回数を重ねることで少しずつスムーズになっていきます。
帯結びにも慣れてきます。
鏡の前で姿を確認することで、自分の着姿の変化にも気づけるようになります。
そして、「今日はこの着物を着て出掛けよう」と、自分から着物を選ぶことができるようになっていきます。
だからこそ、着物生活を始めるときには、最初からたくさんのものを揃える必要はありません。
むしろ、今持っている着物や帯を一度見直してみることをおすすめします。
タンスの中に眠っている着物を一枚ずつ取り出して、
「これは好き」
「これは今の自分に似合いそう」
「この帯なら使えそう」
「この着物は仕立て直したら着られるかもしれない」
と考えてみる。
すると、今まで気づかなかった「自分の持ち物の可能性」が見えてくることがあります。
そして、意外と大きな力を発揮してくれるのが、帯揚げや帯締めなどの小物です。
着物や帯を何枚も増やさなくても、小物を変えるだけで装いの印象は大きく変わります。
同じ着物、同じ帯でも、帯締めの色を変えるだけで全体が引き締まったり、帯揚げを変えることで柔らかく女性らしい雰囲気になったりします。
「着物一枚、帯一本」でも、小物を工夫すれば、何通りもの表情を楽しむことができます。
これは、着物の大きな魅力のひとつです。
限られたものを組み合わせ、工夫することで、新しい価値を生み出していく。
そう考えると、着物のおしゃれは「たくさん持っている人だけのもの」ではありません。
むしろ、今あるものをどう組み合わせ、どう活かしていくか。
そこに、その人らしいセンスが表れるのだと思います。
麗和塾では、着物の着方だけをお伝えしているのではありません。
「自分にはどんな着物が似合うのか」
「今持っている着物をどう活かせばよいのか」
「どんな帯を合わせればよいのか」
「どのような小物を選べば、もっと着物を楽しめるのか」
そんな、一人ひとりの「着物を着たその先」まで大切にしています。
着付けを習って、自分で着物を着られるようになる。
そして、その技術を使って実際に着物を着る。
自分に似合うコーディネートを考え、好きな場所へ出掛ける。
そこで「素敵ですね」と声を掛けてもらえたり、自分自身が鏡に映った姿を見て「今日の私、いいな」と思えたりする。
そんな小さな「叶った」が積み重なっていくことで、着物は単なる衣服ではなく、毎日の暮らしに彩りを与えてくれる存在になっていきます。
新しい年を迎えると、「今年はこんなことをしたい」と目標を立てる方も多いでしょう。
もし、まだ自分で着物を着ることができないのであれば、来年の目標のひとつに、
「自分で着物を着こなせる私になる」
を加えてみませんか?
最初から完璧でなくても大丈夫です。
一歩ずつ練習して、着物を着る回数を増やしていく。
帯を結ぶことに慣れていく。
自分に似合う色や柄を知っていく。
手持ちの着物を活かす方法を覚えていく。
そうすることで、少しずつ「着物を着られる私」から、「着物を楽しめる私」へと変わっていきます。
願望という分母が増えれば、叶うことという分子も増えていく。
着物も同じです。
ただ数を増やすのではなく、自分に合うものを選び、今あるものを活かし、着物を着る機会を増やしていく。
そうすれば、着物から生まれる楽しみや喜びは、きっと少しずつ増えていきます。
タンスの中に眠っている着物も、まだ出会っていない「新しい自分」も、もしかするとそこに眠っているのかもしれません。
来年は、着物を「持っている」だけではなく、
「自分で着物を着こなせる私」
を目指してみませんか?
着物を着ることで、自分の可能性を広げる。
そして、一つひとつの「できた」「楽しい」を増やしていく。
そんな着物との時間を、麗和塾で一緒に育てていきましょう。


