「着られる私」になるための着付け時間

着物着付け教室福岡  麗和塾  内村圭です。

 

 

「着物を気軽に着られるようになりたい」と思い、着付け教室を探した経験のある方は多いのではないでしょうか。
無料体験、ワンコイン講座、YouTube動画、有料の専門教室――現代にはさまざまな学びの形があります。どれも着物の世界に一歩踏み出すきっかけとして魅力的ですが、「どんな教室で、どのように学ぶか」を見極めることが、着物を長く楽しむための第一歩になります。

着付け教室を選ぶ前に知っておきたいこと

着付けを学ぼうと決めたとき、まず考えたいのは「自分が何を目指すのか」ということです。
たとえば、「自分で着られるようになりたい」「人に着せてあげたい」「お出かけを楽しみたい」「資格を取りたい」――目的によって選ぶべき教室や学び方が変わります。

着付け教室には、基礎を学ぶところもあれば、資格取得や着付け師としての技術を磨くことを目的とした専門的な教室もあります。また、無料やワンコインで体験できる講座は、雰囲気を知るための入り口として最適です。しかし、継続的に学びたい場合は、次のような点を確認しておくと安心です。

  • 何をどこまで教えてもらえるのか?
     → 自分で着られるようになるまでなのか、人への着付けも含むのか。

  • フォロー体制はあるか?
     → レッスン後の質問対応や復習会、動画サポートなどがあると、技術の定着がしやすくなります。

  • どのくらいの期間で習得できるのか?
     → 短期集中か、ゆっくりペースか。自分の生活に合わせた学び方を選ぶことが大切です。

 

 

 

 

 

 

 

これらを確認せずに始めてしまうと、思っていた内容と違ったり、途中でモチベーションを失ってしまったりすることも。学ぶ前の“下調べ”が、実は上達への近道なのです。

学んで終わりにしない ― 技術を「身につける」ために

着付け教室に通い、ある程度着られるようになると、多くの方が安心してしまいます。
けれども、実はここからが本当のスタートです。

どんなに丁寧に教えてもらっても、学んだ技術は“使わなければ”定着しません。
少し期間が空くだけで、「あれ? 帯の締め方、どっちだったかしら」「衿合わせがうまくいかない…」と戸惑うことも多いものです。

「習ったときはできたのに、久しぶりに着ようと思ったら着られなかった」
――これは、着物を学ぶ人たちの間でよく耳にするお話です。

その原因は、技術を身体が覚える前に時間を空けてしまうことにあります。着付けは、頭で理解するだけでなく、手の感覚や身体の動きに馴染ませることが大切。ですから、学んだ直後の時期こそ「繰り返し練習する」ことが重要です。

ほんの10分でもいいのです。週に一度、衿合わせの練習だけでも構いません。
着物を触る習慣を続けていると、指先が自然と動くようになり、いつの間にか「身体が覚えた」状態になります。これが、着物を“自分のもの”にする第一歩なのです。

「着たいときにいつでも着られる」自分になる

着物が着られるようになっても、「着る機会がないから」と遠ざけてしまう方は少なくありません。
ですが、せっかく身につけた技術も、使わなければ次第に薄れていってしまいます。

そこでおすすめしたいのが、「日常の中に着物を取り入れること」です。特別な場でなくても構いません。
たとえば、休日の朝に少し時間をとって家の中で着てみる。
近くのカフェやお寺へお散歩に行くときに着てみる。
季節の行事や友人とのランチに合わせて着る。

このように、着物を“非日常”から“日常”に引き寄せていくことで、「着る」ことが自然な行動になります。
「着たい」と思ったときにすぐ手に取れるようになると、着物はぐっと身近な存在になるのです。

継続のコツは「完璧を求めすぎないこと」

多くの方が「着物を着るのは大変そう」「きちんと着られないと恥ずかしい」と感じてしまいがちです。
しかし、初めから完璧を目指す必要はありません。むしろ、少しずつ慣れていくことで、自然な着こなしが身についていきます。

着付けは、手順を覚えるだけでなく、「着心地」や「自分らしい形」を見つけていく過程でもあります。
衿の抜き方、帯の高さ、柄の見せ方――人それぞれに似合う形があり、それを探すのも楽しみのひとつです。

「今日はここまでできた」「前よりスムーズに帯が結べた」
そんな小さな達成感を積み重ねていくことが、継続のエネルギーになります。

身につけた技術は一生もの

着付けを学ぶことは、単に着物を着られるようになるだけではありません。
そこには、所作の美しさや、丁寧に自分を扱う感覚が自然と身につくという大きな価値があります。

帯を締めながら姿勢を整え、衿を合わせながら呼吸を深くする。
その一つひとつの動作が、心を落ち着かせ、自分を見つめ直す時間となるのです。

こうして身につけた着付けの技術は、一度覚えれば一生もの。
年齢を重ねても、どんな体型になっても、自分で自分を美しく整えられる――それは何よりの自信になります。

自分だけの「着物時間」を育てていく

着物を着られるようになったその先にこそ、本当の楽しみが待っています。
お出かけの計画を立てたり、帯や小物の組み合わせを考えたりする時間は、日常に小さな喜びをもたらします。

また、「自分なりの着物の楽しみ方」を見つけることが、長く続ける秘訣です。
お気に入りの喫茶店で読書をするときに着る、季節の草花を意識したコーディネートを試す、古い帯をリメイクして新しい表情を楽しむ――どんな形でも構いません。

着物は、特別な日のためだけの衣服ではなく、自分の心を豊かにする“人生のパートナー”のような存在です。

着付けを学ぶことは、技術を得るだけでなく、自分を丁寧に扱う時間を持つことでもあります。
そして、その学びを暮らしの中で生かしてこそ、本当の意味で「着られるようになった」と言えるのではないでしょうか。

「いつでも着たいときに着られる自分」でいること。
そのためには、学びを続け、小さな実践を重ね、自分のペースで楽しみながら技術を育てていくことが大切です。

学んで終わりにせず、「着物と共に生きる」日々へ。
その積み重ねが、きっとあなたの人生にやさしい彩りを添えてくれることでしょう。