リサイクル着物が広げる新しい世界
着物着付け教室福岡 麗和塾 内村圭です。
「着物は洋服よりも安くて、しかも長持ちするんですね」と、笑顔で話してくださったのは、私どもの講座にご参加くださっている受講生の方。ご自身で工夫を凝らしながら、お得に着物ライフを楽しんでおられるその様子は、実に生き生きとしていて、まさに現代の着物上手と言えるでしょう。
近年では、リサイクル着物やインターネットでの購入が広く一般的になり、「着物=高価なもの」という従来のイメージを覆すような買い方が注目されています。受講生の皆さまの中にも、オークションサイトやフリマアプリ、専門のリサイクルショップなどを上手に活用し、ご自分のスタイルに合った一枚を見つけておられる方が多くいらっしゃいます。
実際に、「この着物、○○○円で手に入れたんですよ!」と、目を輝かせながら戦利品を見せてくださる方もおられ、着物談義はますます盛り上がります。その嬉しそうなお姿を見ると、こちらまでわくわくした気持ちになります。
私自身はといえば、基本的には店舗で実物を手に取って選ぶことを好んできました。素材感や色味、状態を直接確かめられる安心感もあり、店舗の雰囲気や店主との会話も、着物選びの楽しみのひとつと感じているからです。
しかし、受講生の皆さまが楽しそうに語られる「ネットでの掘り出し物探し」の魅力を耳にするたび、思わず「私もやってみたい!」という気持ちが芽生えてきました。現在はまさに、その新たな世界をのぞきはじめたところです。
ネットでの着物探しには、選ぶ楽しみ、着る楽しみ、そして「競り落とす」楽しみまでが含まれているように思います。まるで宝探しをしているような、そんな心躍る体験なのでしょう。
また、リサイクル着物の魅力は、ただ「安く手に入る」という点にとどまりません。誰かにとって不要になったものが、別の誰かの元で新たな命を吹き込まれ、大切に着られていくという循環がそこにはあります。
一枚の着物が持つ歴史や背景を想像しながら、袖を通す。これこそが、着物文化が持つ奥深さであり、現代に生きる私たちが継承すべき“美意識”なのかもしれません。
まさに、「捨てる神あれば拾う神あり」。リサイクル着物は、持ち主を変えながらも、その本来の役割を見事に果たし続けているのです。
ただし、ここで気をつけていただきたいのは、「お手頃だから」とつい購入しすぎてしまうこと。気がつけば、着る予定もなく仕舞い込まれた着物がタンスに増えていく……というのは、残念ながらよくある話です。
せっかくの素敵な着物も、「いつか着よう」と思ったままでは、ただの“箪笥の肥やし”になってしまいます。大切なのは、今自分が持っている着物の枚数や種類をしっかり把握したうえで、必要なものを計画的に揃えていくことです。
特にリサイクル品は、サイズや仕立て直しの有無、汚れや傷の程度などもチェックポイントとなりますので、「安いから」と飛びつく前に、きちんと確認しておきましょう。
着物は、かつてのように“特別な場でのみ着るもの”という存在ではなくなりました。現代では、気軽に日常生活に取り入れる方も増え、“着物は金持ちの道楽”といった時代錯誤のイメージも、過去のものとなりつつあります。
お得に、賢く、そして自分らしく。そんな着物の楽しみ方ができる時代だからこそ、一人ひとりが自分なりの価値観を持って、無理のない範囲で着物を生活に取り入れていくことが大切です。
リサイクル着物との出会いをきっかけに、着物という文化に少しでも興味を持ってくださる方が増えていくのは、とても喜ばしいことです。かつて誰かの大切な一枚だった着物が、また別の誰かに愛されていくという循環の中に、私たちも静かに加わっていけたら──。
これからも、着物のある日常が、より豊かで心地よいものになりますように。今こそ、自分だけの着物ライフを充実させる計画を立ててみてはいかがでしょうか。