季節の変わり目を着物で楽しむ
福岡着物着付け教室 麗和塾 内村圭です。
季節が移ろいゆく時期は、私たちの心にも新たな風が吹き込むような気がします。ふとした瞬間に、何か新しいものを取り入れたくなる——そんな気持ちになることはありませんか?
洋服であれば新しいトップスやスカーフを手に取るように、着物の世界でも季節の変化を楽しむことは可能です。たとえば、小物に明るい春らしい色を取り入れるだけで、普段よく着ている着物もたちまち春の装いに変わります。私は今まさにその変化を楽しんでいる最中で、季節の彩りを小物に映しながら、新たな気分で着物を纏っています。
着物においても、季節の変わり目に行う「衣更え」があります。特に「単衣(ひとえ)」と呼ばれる、裏地のない軽やかな着物は、本来であれば6月から着始めるのが通例とされてきました。しかし、近年の気候変動を受けて、4月半ばの暖かい日から単衣を楽しむ方も増えてきています。実際に久しぶりに単衣を着ると、その軽さに心も身体もふわりと軽くなるようで、思わずお出掛けしたくなる気分になります。
特に春は、新生活や新しい挑戦が始まる季節でもあります。「いつかは着物を着てみたい」と思っていた方にとっては、まさに今がその一歩を踏み出す絶好の機会。「今こそ着物!」とお伝えしたいほど、春は着物にぴったりな季節なのです。
日常が洋服中心の方でも、着物を1枚取り入れるだけで、自分自身の見た目にも、気持ちにも変化が訪れます。姿勢が自然と正され、丁寧な所作を意識するようになり、まるで内面までも磨かれていくような感覚に包まれるでしょう。
外見を変えることは、自分の内面にも影響を与える大きな一歩になります。たとえば、いつもと違う装いをすることで、気持ちが引き締まり、日々の過ごし方に対する意識が高まります。そしてその意識の変化が、やがて習慣へと繋がり、人生の新たなステージを切り開くきっかけとなるのです。
また、着物はその季節感を大切にする装いでもあります。四季折々の柄や素材を身にまとうことで、日本人としての感性や文化への敬意を自然と身につけることができます。春には桜や梅、夏には朝顔や金魚、秋には紅葉や菊、冬には南天や雪輪など……。季節を意識したコーディネートを考える時間も、また着物の楽しみの一つです。
「着物は難しそう」「敷居が高い」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそんなことはありません。まずは小さな一歩から、例えば着物を羽織ってみることから始めてみるのも良いでしょう。大切なのは「やってみよう」という気持ちと、自分の可能性を信じることです。
着物を通して、自分らしさを再発見し、日々の暮らしに彩りを加えることができます。自分がどんな風に在りたいのか、どんな毎日を送りたいのか。着物は、そんな想いをカタチにする一つの手段であり、人生をより豊かにするための素晴らしいパートナーでもあるのです。
季節の変わり目は、自分を見つめ直す良いタイミングでもあります。日々の生活に新しい風を取り入れるように、着物という文化の風を感じてみてはいかがでしょうか?
「いつかは」と思っていた着物生活を、「今こそ」始めることで、きっとこれまで知らなかった自分と出会えるはずです。そしてその小さな一歩が、あなたの人生に大きな彩りを添えてくれることでしょう。
春の光に包まれて、軽やかに一歩を踏み出すその時——着物はきっと、あなたの背中をそっと押してくれることでしょう。今こそ、自分の中にある新しい可能性を信じて、変化の時を楽しんでみませんか?