時短の先にある“着物時間”

着物着付け教室  麗和塾  内村圭です。

現代の暮らしは、何かと忙しく、毎日の時間配分に追われるような日々が続きます。
その中で「時短」という言葉に惹かれる方も多いのではないでしょうか。効率的に家事や仕事をこなすための時短グッズやテクニックは、忙しい私たちにとって確かに心強い味方です。

私自身も、さまざまな時短アイデアを日常に取り入れてきました。
ですが、あまりにも「時短・時短」とばかり意識してしまうと、日々の暮らしに味気なさを感じてしまうこともあるのが正直なところです。
機械的に「こなす」ばかりでは、心が置き去りになってしまう気がするのです。

 

私が今、大切にしているのは、“時短によって生まれた時間を、心豊かなことに使う”という考え方です。
たとえば、家事を手際よく済ませて時間を「貯金」し、その浮いた時間を着物の整理やお手入れ、そして着物を着る準備に使うというサイクルが、いつの間にか自分の中で定着してきました。

着物を着るという行為は、決して「パッと着て出かける」だけのものではありません。

  • 和髪を整える

  • メイクを少し丁寧に仕上げる

  • 下着から順に着付けを行う

そういった準備にはそれなりに時間がかかりますが、その「ひと手間」こそが、自分を丁寧に扱う時間であり、内面から整っていく感覚が得られるのです。


■ 着物の準備時間は「心を整えるリチュアル」

着物を着ることには、日常から少し距離をとって、心のスイッチを切り替える力があります。
髪を整え、襟を合わせ、帯を結ぶたびに、自然と姿勢が正され、気持ちも引き締まっていくのです。

こうした時間は、単なる「装うための準備」ではなく、自分を慈しむための豊かな時間だと感じています。
手間がかかるからこそ、その一瞬一瞬に価値が宿り、「今日を大切に生きる」という意識が生まれるのです。

特に忙しい毎日だからこそ、こうした“自分のための時間”を意識的に持つことが大切です。
それは決して贅沢ではなく、むしろ必要な「心の栄養」とも言えるのではないでしょうか。


■ 「何を大切にするか」を決めると、生活は整う

現代は、選択肢があまりにも多く、何でもこなそうとすると心が疲弊してしまいます。
そこで重要になるのが、「何を優先するか」という軸を自分の中に持つこと。

私の場合、「着物のある暮らしを楽しみたい」という気持ちが明確にありますので、
そのためにどう時間を使い、何を手放すかという選択が自然とできるようになってきました。

たとえば…

  • 掃除や料理は必要最低限に効率よく済ませる

  • 時間と労力のかかる無駄な誘いは断る

  • SNSやテレビを見る時間を意識的に減らす

こうした“省ける部分”を見直すことで、心から大切にしたいことに集中できるようになります。
そして、着物の手入れやコーディネート、外出の計画といった楽しみのための時間が生まれるのです。

■ 着物のある暮らしを無理なく続けるために

「着物を着たいけれど、準備に時間がかかる」「毎日忙しくてとても無理」と感じている方も多いかと思います。
けれど、すべてを一気に変える必要はありません。

  • まずは月に一度、着物で出かける日をつくってみる

  • 着物を整理して、すぐに取り出せるようにしておく

  • メイクや髪型のコツを事前に練習しておく

こうした小さな工夫が、やがて“着物が日常にある暮らし”へとつながっていきます。

そして、最初に着るまでのハードルが高く感じても、いざ一歩を踏み出すと、その心地よさや楽しさにきっと驚かれるはずです。
着物を着て出かけたその日から、日常が少しずつ輝き始めます。

日々に追われていると、自分が本当に望んでいる暮らしを見失いがちです。
けれどふと立ち止まって「どんな時間の使い方をしたいか」「自分はどうありたいか」を考えることは、
これからの生き方を見つめ直すうえでも大切な時間になります。

  • 丁寧に自分を扱いたい

  • おしゃれを楽しみたい

  • 季節の移ろいを肌で感じたい

  • 日本文化に触れる時間が欲しい

もし、そのどれかひとつでも思い当たるなら、**「着物のある暮らし」**は、あなたにとって大きなヒントになるかもしれません。

日々の忙しさに追われながらも、自分の時間を少しずつ取り戻すことは可能です。
そして、時短という選択は「心を亡くす」のではなく、「心を取り戻す」ための第一歩にもなり得ます。

着物は、そんな日常の中に凛とした美しさと静かな喜びをもたらしてくれます。
だからこそ、無理なく、けれど確かに、自分の理想の生活に近づくための小さな工夫として、
着物時間を取り入れてみてはいかがでしょうか。

麗和塾では、着物をもっと身近に、もっと楽しく感じていただけるよう、日々の暮らしに寄り添ったご提案をしております。
着物を通じて、自分自身を慈しみ、時間の使い方を見つめ直すきっかけとなれば幸いです。