着物をより美しく、着やすくする工夫

着物着付け教室福岡 麗和塾 内村圭です。

 

~サイズ調整とお直しで叶える理想の着こなし~

着物をすべて誂え(あつらえ)で仕立てたものだけをお持ちの方は、決して多くはないでしょう。

着物に興味を持ち始めたとき、着付けを習い始めたころ、あるいは自分で着物を着られるようになったときなど、さまざまなタイミングで「新しい着物が欲しい」と思う瞬間が訪れます。

現在では、昔と比べて着物の購入方法も大きく変化しています。ネットショップを利用すれば、自宅にいながら簡単に着物を手に入れることができ、リサイクル市場を活用すれば、誂えるよりもはるかに手軽な価格で購入することも可能です。このように、現代では「着物を手に入れやすい環境」が整っています。

しかしながら、自分の体にぴったり合う着物が見つかることは、そう多くありません。譲り受けた着物に関しても同様で、仕立てられた当時の持ち主の体型と現在の自分のサイズが異なることもよくあります。

では、そうした「サイズが合わない着物」を、いかに着やすく、美しく整えることができるのでしょうか?


着物は「工夫」で着られるもの

着物は洋服と異なり、直線裁ちというシンプルな構造を持っているため、着付けの工夫やちょっとした調整を行うことで、ある程度のサイズ違いは補うことができます。

例えば、着丈が長い場合は、腰ひもや伊達締めの締め方を調整することで対応できますし、袖丈が多少違っても、よほど大きな差がない限りは問題なく着ることができます。

しかし、どうしても調整が難しい部分もあります。それが 「着やすい着物」=自分の体に合った寸法の着物」 です。


「着やすい着物」にするためのポイント

着物は、仕立てた当時は体にぴったり合っていたとしても、年月とともに体型が変わり、寸法が合わなくなることがあります。特に若いころに誂えた着物は、年齢を重ねるにつれて「少し窮屈に感じる」「丈が短いと感じる」といったことが起こりがちです。

そのため、着物をより美しく、快適に着るためには 最小限のお直し を施し、自分の体にフィットさせることが重要です。

①裄(ゆき)の調整

裄とは、首の付け根から手首までの長さのことを指します。現代の標準的な裄の長さは、昔の仕立てよりもやや長めにとられる傾向にあるため、昔の着物を着る際には「袖が短い」と感じることがあります。その場合、肩や袖の縫い目を少し出すことで調整可能です。

②身幅の調整

着物の幅が狭いと、おはしょりがうまく収まらず、着崩れの原因となることがあります。特に、洋服よりもゆったりとしたサイズ感が求められる着物において、身幅の調整は着やすさを大きく左右します。

③着丈の調整

着丈が短いと、帯の位置を下げても裾が十分に長くならず、バランスが悪く見えてしまうことがあります。丈が足りない場合は、裾を足す「継ぎ足し仕立て」を検討するのも一つの方法です。

④衿の補正

衿元が詰まっていたり、逆に広がりすぎていたりすると、着姿の美しさに影響を与えます。衿のカーブを整えたり、芯の入れ方を変えることで、より着やすい仕立てにすることが可能です。


「美しく着るためのひと手間」は惜しまない

着物はサイズが合わなくても、多少の工夫や調整で着ることができます。しかし、せっかくの着物をより美しく、快適に着るためには、適切な寸法にお直しをすることも大切です。

特に、少しの手間をかけることで、 「着やすい着物」=「着る機会が増える着物」 へと生まれ変わります。

「サイズが合わないから」と諦めるのではなく、可能な範囲で調整を行い、自分にとって心地よい着物として活用できるようにしましょう。


「着やすく、美しい着物姿」を叶えるために

着物は誂えたものでなくても、リサイクル品や譲り受けたものでも、工夫次第で十分に楽しむことができます。そして、自分の体に合わせて適切にお直しをすることで、より快適に、美しく着こなすことが可能になります。

「手に入れたけれどサイズが合わない」と感じたときこそ、少し手間をかけて着物を整えるチャンスです。着やすくするための調整を行い、より一層着物を楽しんでみませんか?