螺旋階段を登るように成長する

着物着付け教室福岡 麗和塾 内村圭です。

 

 

~着付けと学びに共通する上達の法則~

ドイツの哲学者ヘーゲルが提唱した「物事の螺旋的発展の法則」は、学習だけでなく、着物の着付けにも通じるものがあります。

着付けを学び始めたころ、基本的な手順を覚えられたときの達成感は大きく、それが次のステップへ進むモチベーションへとつながります。

螺旋階段のように、一周目は基本を学ぶ段階です。ここでは、ひとつひとつの動作を確認しながら習得していくため、上達の実感を得やすく、練習の成果も目に見えて現れることが多いでしょう。

しかし、二周目に入ると、基本を踏まえたうえで、より効率的に動くことが求められます。この段階では、着付けの手順を単に覚えるだけでなく、考えながら行動することが重要になります。そして、三周目、四周目へと進むにつれ、動作の精度を高め、自信と達成感を感じる段階へと移行していきます。

ところが、練習を続けていくうちに、初期ほどの上達を実感できなくなり、スランプを感じることがあります。これは多くの人が経験することで、決して後退しているわけではありません。

むしろ、螺旋階段を登るように、着実にスキルが向上し、視点が変わることで、今まで気にならなかった細かい部分が見えてくる証拠なのです。

成長の過程で生じる停滞感

私自身、着物を着るときに、以前はスムーズにできていた部分で急に手こずることがあります。また、着物のお仕立てでも、得意だった袖の丸みを思うように仕上げられなかったり、褄先(つまさき)部分の処理に時間がかかり、予定どおり進まなくなることがあります。

こうした状況に直面すると、「自分の技術が後退してしまったのではないか」と感じ、戸惑うこともあるかもしれません。しかし、それは決して後退ではなく、むしろ技術をさらに向上させるために必要な過程なのです。

スランプを感じるときこそ、「自分が螺旋階段をひとつ上がったところにいるのだ」と捉え、焦らずに練習を続けることが大切です。

技術を定着させるための工夫

何かを習得し、技術として定着させるためには、反復練習が欠かせません。しかし、ただ繰り返すだけでは、慣れや飽きが生じ、練習の質が下がることもあります。そのため、意識的に取り組むことが重要になります。

① 目標を設定する

「どのように着物を着こなせるようになりたいのか」「どの動作をより美しく仕上げたいのか」など、具体的な目標を持つことで、練習のモチベーションを維持しやすくなります。

② 仲間と励まし合う

一人で練習を続けていると、思うように上達しないことが不安になることもあります。そんなとき、同じ目標を持つ仲間と励まし合うことで、モチベーションを保つことができます。

③ スランプも成長の証と捉える

スランプに陥ったときは、「自分は今、螺旋階段のどの段階にいるのだろう」と考えてみるのも良いでしょう。一度立ち止まって振り返ることで、今までの成長を実感し、次のステップへ進む糧となります。

着実に上達するために

着物の着付けを学ぶことは、一朝一夕で習得できるものではありません。しかし、螺旋階段を一歩ずつ登るように、確実に技術を身につけていくことで、やがて「より美しく、より快適に着物を着こなせる自分」に出会えるはずです。

停滞を感じたときこそ、それは成長の過程で必要なステップなのだと受け止め、自分を信じて練習を続けてみましょう。やがて新たな視点が開け、今までとは違う景色が見えてくるはずです。