眠っている着物を今の自分に活かす方法

着物着付け教室  麗和塾  内村圭です。

ご自宅のタンスに、長年しまわれたままの着物はありませんか?
実は、多くのご家庭において、かつて誂えた大切な着物が、今では着る機会もないまま眠り続けているという現実があります。

「もったいない」と感じつつも、つい後回しになってしまう。
その背景には、「高価なものだから捨てられない」「いつか着るかもしれない」「手放すには惜しい」といった、誰もが抱く心の葛藤があるのではないでしょうか。
また、着物の買い取り価格が驚くほど低いという話を耳にし、結局は処分もできず、年月だけが過ぎてしまっている……というお声もよく伺います。

しかし、着物は「着てこそ活きる」もの。
どれほど高価で、手の込んだものであっても、着ることなくタンスに眠らせていては、まさに“宝の持ち腐れ”となってしまいます。

「着方がわからない」「自分で着られない」「着付けをお願いすると費用がかかる」「着ていく場所がない」──
こうした理由から、せっかくの着物を活用できずにいる方も少なくありません。

けれど、心のどこかでテレビや雑誌に映る凛とした着物姿に、ふと憧れを抱いたことはありませんか?
「こんなふうに着てみたい」「あんな装いなら自分にも似合うかも」──
そんな気持ちが芽生えたなら、ぜひその想いを大切にしていただきたいのです。

着物に袖を通すというのは、特別なもの。
その一歩は、小さくても確かな変化をもたらします。
そして、その一歩こそが、長らく眠っていた着物を再び輝かせる最も有効な手段となります。

とはいえ、昔のままのコーディネートでは、現在のライフスタイルや感覚にそぐわないこともあるでしょう。
そんなときこそ、“今のあなた”に似合う着こなしを取り入れることが大切です。
帯や小物を変えてみる、半衿や帯締めに色を加える、草履やバッグを今風のものにする……
そうした工夫ひとつで、印象はぐんと垢抜け、現代的な着物姿へと生まれ変わります。

古いからといって、そのまま手放すのではなく、「今の自分に似合うようにアレンジする」ことこそが、着物を受け継ぐ最善の方法ではないでしょうか。
親や祖母から譲り受けた一枚に、自分らしさをプラスすることで、着物は単なる衣服を超え、「世代をつなぐ心の装い」として、より深い意味を持つようになります。

そして何より、タンスの中の着物を「すぐに着られる状態」に整えておくことが、第一歩となります。
長襦袢のサイズは合っているか、腰紐や伊達締めなどの小物は揃っているか、半衿は清潔か──
これらを点検し、必要に応じてメンテナンスを施すことで、思い立ったその日にすぐ着られる準備が整います。

「着物=特別な日だけのもの」と捉えるのではなく、もっと自由に、もっと気軽に袖を通してみませんか?
近所へのお出かけや、友人との食事、観劇や美術館など、ちょっとしたお出かけでも、着物はその場に華やぎを添えてくれます。

着物を着ることで自然と背筋が伸び、心も整い、日常の中にほんの少しの「特別」が加わる。
それは、洋服では味わえない着物ならではの魅力です。

“いつか”ではなく“今”を大切に。
タンスに眠る着物を、あなたの毎日に活かしてみませんか?
着物は、纏うことで初めてその本来の価値を放ちます。

眠っていた一枚が、今のあなたを最も美しく映し出す装いへと変わるその瞬間、きっとあなたの中に、新しい自分との出会いが生まれることでしょう。