着物による気持ちのリセット術

着付け教室福岡  麗和塾  内村圭です。

慌ただしく過ぎていく毎日。
気がつけば、あっという間に一ヶ月が経っていた……そんなふうに感じることはありませんか?
仕事や家事、人間関係に追われて、気がつけば自分のことは後回し。時間だけが流れ、気持ちの余裕を失ってしまうこともあるかもしれません。

けれど、月の終わりに「今月は充実していたな」「頑張った自分を褒めてあげたいな」と思えるような日々を過ごせたなら、心に豊かさが広がります。そのためには、ただ時間を過ごすのではなく、“いつもと同じ”に小さな変化を加えることが大切です。

「いつも」をほんの少しだけ変えてみる。それが、毎日を少しずつ動かし、やがて人生そのものを豊かに変えていく一歩になります。

よく耳にする「ドキドキ」「ワクワク」「トキメキ」といった言葉。これは、単に楽しいことを求めるだけではなく、自分自身の内側から湧き上がる“高揚感”を得るための行動です。心が動く体験は、思考や表情に変化をもたらし、日々の停滞感から抜け出すきっかけにもなります。

特に「自分の心にエネルギーをチャージしたい」「なんだか気分が沈んでいる」と感じたときには、“いつもを変える”ことを意識してみてください。

私自身、気分が落ち込んでいるときや、なんとなくどんよりしている日には、「着物を着て外へ出る」ことにしています。
もちろん、体力が限界に近いときには、家でゆっくり過ごすことも大切です。ですが、「気持ちの切り替え」には、思い切って外に出てみることのほうが、格段にリフレッシュ効果が高いと実感しています。

着物に袖を通し、身支度を整える過程で、気分が自然とよそ行きに切り替わっていきます。
「出掛ける予定がないのに着物?」と思われるかもしれませんが、近所のスーパーやカフェでさえ、着物姿で出掛けると、いつもと景色が違って見えるのです。

普段見慣れた街並みやお店の風景でも、着物で歩くだけで、自分自身の感覚が変わり、新しい発見や思いがけない会話に出会うことがあります。その“小さな刺激”こそが、負の思考から抜け出すヒントとなり、心を軽やかにしてくれるのです。

特に私がよく通う近所のカフェは、洋服で訪れるよりも、着物で行く機会の方が多くなっています。お気に入りの着物を着て、好きな場所で美味しいお茶をいただく——そんな時間が、自分の心を整え、エネルギーを回復させてくれるのです。

面白いことに、そんな風に着物でリラックスして過ごしていると、お店のスタッフの方や、顔なじみのお客様から、思いがけずお仕事のお話をいただくことも多くあります。
「着物の着付けができる方を知ってますか?」
「仕立て直しの相談をしたいのですが……」
「タンスの整理をしたくて、誰かに相談できないかと」

これまでにも、そんなふうにご縁が繋がり、着物に関するお仕事をいただいた経験が何度もありました。もし私が家でくすぶっていたら、そうしたチャンスは決して訪れなかったでしょう。
「外へ出る」「いつもを変える」その行動が、新たな展開を呼び込む原動力になっているのだと実感しています。

こうした経験を通じて、気分が落ち込んでいるときには、「気分転換ではなく高揚感を得る行動」を選ぶようになりました。

そして何よりも大切なのは、「自分の機嫌は自分でとる」ということ。
周りがどうであれ、自分の心は自分で整えるしかありません。
そんなとき、着物はとても頼もしい存在になってくれるのです。

着物は「非日常」を演出する装いでありながら、決して“特別な日のためだけ”のものではありません。日常に着物を取り入れることは、自分自身と丁寧に向き合い、気持ちをリセットし、整える時間でもあるのです。

少し落ち込んだ日、疲れて無気力になりそうな日、何となく物足りないと感じる日……
そんな時こそ、着物に袖を通してみてください。
そして、近くのカフェへ、散歩へ、買い物へと、ほんの少し外の空気に触れてみてください。

「いつもを変える」その小さな一歩が、心に新しい風を吹き込みます。
高揚感を得ることで、気持ちが明るくなり、自分が発するエネルギーも変わっていきます。
そしてそのエネルギーが、また新しい出会いやチャンスを運んできてくれることでしょう。

慌ただしい日々のなかでも、自分の気持ちを丁寧に扱い、心地よい時間を自らつくっていく。
そんな毎日を重ねていくことで、「今月も充実していた」と胸を張って言えるようになるはずです。

着物は、そのための心強い味方。
自分の心を整え、前向きな自分に戻るための、とっておきのスイッチです。

どうぞ、今日という一日に“少しの変化”を加えてみてください。
その先に、あなたらしい輝きが待っているはずです。