着物を購入するときに知っていたいこと

着物着付け教室福岡  麗和塾  内村圭です。

着物を新調するという出来事には、何ものにも代えがたい喜びがあります。年齢を重ねても、女性にとって「新しいものを手に入れる」という瞬間は、心が躍るものではないでしょうか。特に、それがずっと憧れていた一枚の着物であれば、そのときめきは格別です。

たとえば、以前から心に留めていた柄や色の反物が、ようやく手に入ったとき。また、偶然街で見かけた着物にひと目惚れして、思い切って購入したとき。どちらも、胸が高鳴る瞬間です。「この着物を着て、どこへ出かけようか」と想像を膨らませる時間は、まさに着物のある暮らしの楽しさの一端です。

着物を新しく迎える方法には、大きく分けて二つあります。一つは、反物から誂える方法。もう一つは、仕立て上がりの着物、いわゆるプレタポルテ(既製品)を選ぶ方法です。

まず、反物から誂える場合は、反物選びから始まり、八掛の色を選び、採寸をして仕立てに入ります。この一連の工程は、自分だけの一枚を作る特別な時間とも言えるでしょう。仕立てが仕上がるまでの期間も、完成を待ち望む気持ちが日々高まり、日常に小さな期待が灯るような、そんな幸福感に満たされます。

一方で、仕立て上がりの着物を購入する場合は、その場で手に取って、すぐに着用できるという手軽さが魅力です。価格も比較的お手頃なものが多く、「気軽に着物を楽しんでみたい」という方にはぴったりです。ただし、仕立て上がりの着物を選ぶ際には、いくつか確認しておきたい大切なポイントがあります。

まず、プレタ着物には、S・M・L・Fなどといったサイズ表記が付いているのが一般的です。しかしながら、このサイズ表記は洋服のものとはやや異なる点に注意が必要です。「洋服でMサイズだから、着物もMサイズで大丈夫」と思って購入すると、いざ着てみた際に「何となく合わない」と感じることも少なくありません。

その理由のひとつに、製造元によって寸法の基準が微妙に異なるという点があります。特に最近は、スリムな若年層を基準にしたサイズ設計のものも多く、身幅がやや細めに作られている傾向があります。また、「大は小を兼ねる」という考え方で、やや大きめに作られていることもあります。

ですから、たとえプレタであっても、できるだけ試着をすることをおすすめいたします。特に気をつけていただきたいのが「裄(ゆき)」の長さです。裄とは、首の付け根から肩を通り、手首までの長さを指します。着物の袖丈と身体のバランスを左右する非常に重要な寸法であり、合っていないと見た目にも違和感が出てしまいます。

プレタ着物には寸法表示のタグがついていますので、購入の際には必ず「裄」の長さをご確認ください。裄が合っていれば、多少身丈が短くても、着付けの工夫次第で美しく着ることができます。身幅も、多少自分の体型と異なっていても、着方により調整が可能です。

とはいえ、裄だけは「足りていない」とすぐに目立ってしまうため、最も重視すべきポイントと言えるでしょう。身丈や身幅は補正や帯の位置で工夫ができますが、裄だけは短いと袖口や手首が不自然に見えがちですので、慎重なチェックが欠かせません。

このように、仕立て上がりの着物を選ぶ際には、「すぐ着られる」という便利さの裏に、サイズ確認という大切なステップがあることを知っておくと、失敗のないお買い物になります。

最後に。着物は決して安い買い物ではありませんが、「自分らしさ」や「ときめき」を形にしてくれる、特別な存在です。一枚の着物が、あなたの日常に華を添え、新たな行動のきっかけや出会いを運んでくれるかもしれません。

誂えであれプレタであれ、自分の気に入った着物を選ぶときの喜びは、何にも代えがたいものです。どうかその一枚との出会いが、あなたの心をさらに豊かに彩るものとなりますように。