古い着物を垢抜けさせる工夫

着付け教室福岡  麗和塾  内村圭です。

「せっかくいただいた着物、これからどんどん着たい!」
そんな気持ちで箪笥から出してみたものの――
鏡の前で袖を通してみると、どこかしら懐かしいような、けれど「ちょっと古くさい…?」と感じることはありませんか?

頂いた着物の多くは、ご家族やご親戚、あるいは知人の方が大切にしていたもので、想いが込められているからこそ手放しづらく、大切にしたいという気持ちも強いものです。しかし、時代を経た昭和の着物には、現代の感覚とは少し異なる色柄やデザインが多く見られ、「自分にはちょっと似合わないかも」と感じてしまう方も少なくないでしょう。

とはいえ、こうした昭和テイストの着物にも魅力はたくさんあります。発色の強さや大胆な柄は、その時代ならではの個性や華やかさを感じさせてくれますし、現代のファッションにはない雰囲気が、むしろ今だからこそ新鮮に映ることもあります。

ただ、そうしたレトロ感を“そのまま”に着ると、少々派手すぎたり、垢抜けない印象になってしまうのも事実。では、どうすれば昭和の着物を“今”の装いとして楽しめるのでしょうか?

コーディネートのポイントは、ずばり「引き算」です。着物がすでに個性的な柄や強い色を持っている場合、帯や小物でさらに華やかさを加えると全体がちぐはぐになりやすく、着姿が“うるさく”見えてしまうことがあります。

そこでおすすめしたいのが引き算の工夫です。

● 帯はシンプルに、無地や控えめなものを

個性的な着物に対しては、無地に近い帯や控えめな柄の帯を選びましょう。淡いグレーやベージュ、生成り色などの「和ませカラー」は、強い発色の着物を上手に引き立ててくれます。

また、帯の素材も光沢を抑えたものを選ぶと、落ち着いた印象に仕上がります。レトロな着物と調和しつつ、現代的なセンスも感じさせるような帯選びがポイントです。

● 小物は「主張しない色」を選ぶ

帯揚げや帯締めといった小物も、同様に控えめな色を選びましょう。薄いグレーや淡いブルー、ベージュ系などが無難です。ここでも着物の色に使われているトーンを拾って統一感を持たせると、全体のバランスが整い洗練された印象になります。

● 羽織で“見せ方”を調整する

それでも「どうしても派手すぎて気になる…」という場合には、羽織の出番です。羽織を羽織ることで、着物の柄の露出面積を抑えることができ、全体の印象を引き締めることができます。羽織自体も無地や落ち着いた色を選ぶと、バランスが取りやすくなります。


頂き物の着物を活かす心持ち

いただいた着物というのは、必ずしも自分の趣味にぴったり合うとは限りません。けれども、それこそが楽しみの入り口でもあります。普段は選ばないような色柄との出会いが、新たな自分を発見するきっかけになることもあるのです。

「この色は着たことがないけど、意外と似合うかも」
「こういう柄を着こなせたら素敵だな」
そんなふうに、自分の枠を広げることができるのも、着物ならではの醍醐味です。

一見すると難しそうに思える昭和の着物も、工夫次第でぐんと垢抜けた印象に変わります。そして、昔の着物には今では手に入らないような質の良さや、丁寧な仕立てが施されているものも多く、長く愛用できるという点でも魅力的です。

古い着物には、その一着一着に歴史があります。どのような場面で着られていたのか、どんな想いが込められていたのか――それを想像することもまた、着物を着る楽しみのひとつです。

ご縁があって自分のもとにやってきた一枚を、自分なりのスタイルで着こなすことができたら、それはとても贅沢な装いではないでしょうか。

「なんだか古くさい」と思ってしまいがちな昭和テイストの着物も、コーディネート次第で現代の街にもしっくり馴染み、品のある装いに変わります。

・個性の強い着物には、シンプルな帯や小物で「引き算コーデ」
・全体の色味は抑えて、着物を主役に
・羽織で露出面積を調整し、垢抜けた印象に
・頂いた着物こそ、自分らしい着こなしで“再発見”を

気負わず、試しながら、そして時には思い切って組み合わせてみることで、自分だけの素敵な着物姿がきっと見つかります。

「ちょっと派手かも?」そんな一枚も、今日からまた違う表情であなたを引き立ててくれるはずです。どうぞ思い切って袖を通してみてくださいね。