今の自分に似合う着こなしの秘訣

着物着付け教室福岡  麗和塾  内村圭です。

着物を楽しむ時間をより豊かにするためには、まず手元にある着物を最大限に活かすことが大切です。新しく誂えることももちろん魅力的ですが、すでに手元にある着物には、思い出やご縁、歴史が宿っています。それらを今の自分らしく着こなせるよう工夫することで、着物時間はより奥深いものになります。

とはいえ、昔に仕立てた着物や、ご家族や知人から譲り受けた着物の中には、そのままでは自分の好みに合わず、袖を通すことをためらってしまうものもあるでしょう。時代によって流行の色柄やサイズ感は変わるため、「似合わない」と感じてしまうのは自然なことです。しかし、少しの工夫でそうした着物も、現代の自分に合う装いへと生まれ変わります。

 

1. 「似合わない」を「活かす」へ変える3つの工夫

古い着物や好みと異なる柄の着物を着こなすには、次の3つの工夫が有効です。

① 半衿に似合う色を使う

顔まわりの印象は、全体のコーディネートに大きな影響を与えます。着物そのものの色柄が好みと少し違っても、半衿に自分に似合う色を取り入れることで、顔映りがぐっと良くなります。たとえば、淡いクリーム色や優しいグレー、または華やかな差し色など、半衿の選び方ひとつで雰囲気は一変します。

② 色数を増やさない

古典柄や独特の配色が特徴的な着物の場合、合わせる帯や小物の色数を控えることで、全体がすっきりまとまります。色数を抑えることで着物の存在感が引き立ち、派手すぎず上品な印象に。特に初めて挑戦する着物の場合は、全体で3色以内にまとめると安心です。

③ 無地に近い帯を使う

柄の多い着物には、無地や地紋の控えめな帯を合わせると、全体のバランスが整います。逆に、帯も柄が強いものを選ぶと視線が散ってしまい、落ち着かない印象になりがちです。帯をシンプルにすることで、着物の個性を引き出しながら、今の自分にも似合う雰囲気を作れます。

2. 「似合う・似合わない」を決める要素

着物が似合うかどうかは、単に柄や色だけでなく、体型、肌の色、メイク、ヘアスタイルなど、さまざまな要素が関わっています。そのため、「この着物は似合わない」と感じても、実は帯や小物、髪型の工夫ひとつで印象が大きく変わることもあります。

特に、肌色との相性は重要です。黄み寄りの肌色の方は温かみのある色合いが、青み寄りの肌色の方は涼しげな色合いが映える傾向があります。自分の肌色や顔立ちに合う色を半衿や帯揚げに取り入れることで、着物全体が自分らしくなじみます。

3. コーディネートの工夫は「発見」の連続

自分では選ばないような着物をあえて着こなしてみると、新しい発見があります。たとえば、落ち着いた色合いの着物が意外と大人っぽく映ったり、華やかな柄が特別な日の気分を盛り上げてくれたり。そうした経験を重ねることで、着物の楽しみ方の幅はどんどん広がっていきます。

また、着物は組み合わせの妙が魅力のひとつです。手持ちの着物と帯を入れ替えるだけで、まったく異なる雰囲気を作ることができます。こうした「工夫の積み重ね」は、着物生活をよりクリエイティブで充実したものにしてくれます。

4. 新しく買うより「活かす」喜び

着物は一枚ごとに生地や仕立て、柄に込められた意味が異なり、どれもが世界にひとつだけの存在です。新しい着物を購入することはもちろん素敵ですが、手元にある着物を工夫して着こなすことには、また別の喜びがあります。

譲り受けた着物は、贈ってくれた人との思い出をまといながら着られる特別感があります。昔誂えた着物は、自分の歩んできた時間を映し出す鏡のような存在です。それらを「今の自分」に寄り添う形に変えることは、着物との新しい関係を築くことでもあります。

5. 工夫を楽しむ心が、着物時間を豊かにする

お手持ちの着物を活かすための工夫は、単に経済的な意味だけではなく、日々の暮らしに彩りを添えるものです。コーディネートを考える時間は、自分と向き合い、好みや感性を磨く時間でもあります。

着物は特別な日だけの装いではなく、日常に取り入れることで一層魅力を発揮します。お茶を飲みに行く日、友人とランチをする日、ちょっとしたお買い物の日にも、お気に入りの組み合わせで袖を通してみましょう。その瞬間から、何気ない一日が特別な「着物時間」に変わります。

着物を長く楽しむためには、新しく買い足すよりも、まずは手元にある着物を工夫して活かすことが大切です。半衿や帯、小物の選び方ひとつで、昔の着物も今の自分にしっくりくる装いへと変化します。

工夫の中で生まれる新しい発見は、着物の楽しみを何倍にも広げてくれます。そして、そのプロセスそのものが、着物と共に過ごす豊かな時間の一部になるのです。