着物を楽しむ生き方
福岡着物着付け教室 麗和塾 内村圭です。
現代の暮らしは、目まぐるしい情報と選択肢にあふれ、知らず知らずのうちに心も時間も追われがちです。そのなかで「本当に大切なこと」を見失いそうになることは、誰しも一度は経験があるのではないでしょうか。日々の生活を豊かにするためには、何かを“足す”ことばかりでなく、むしろ“引く”こと、つまり不要なものを手放すことが大切なのかもしれません。
「生活から無くすと、豊かになるものがあります」
・生産性のない習慣
毎日なんとなく続けているけれど、振り返ってみれば何も生み出していない時間。だらだらとスマートフォンを眺めたり、惰性で観るテレビ番組…。心を休めるための“何もしない時間”はもちろん必要ですが、それが漫然とした時間に変わってしまうと、心の満足感からは遠ざかってしまいます。
・自分を犠牲にする働き方
「期待に応えなければ」「迷惑をかけてはいけない」――そう思って、自分の体調や気持ちを後回しにしていませんか?
他人のために尽くすことは尊いものですが、それによって自分をすり減らしてしまっては、継続的な幸せにはつながりません。まず自分を大切にすることが、まわりの人にも優しくできる原点になるはずです。
・先延ばしの予定
「そのうちやろう」「もう少し余裕ができたら…」と先延ばしにしていることはありませんか?
予定を引き延ばすほど、やりたい気持ちは薄れ、結局やらずに終わることも。行動には“今このとき”という勢いが大切です。いつか、ではなく“次はいつにするか”を自分で決めて動くことが、日々を前向きに進める鍵になります。
・栄養のない食事/運動不足/睡眠不足
これらはすべて、健康の土台にかかわる基本的な要素です。栄養バランスの良い食事をとり、身体を適度に動かし、しっかり眠る――この三本柱が整うと、心にもゆとりが生まれます。反対に、それらが不足すると、疲れやストレスが溜まり、思考や感情のバランスも崩れてしまいます。
・無駄な飲み会
誰かとの交流はもちろん大切ですが、「行かなくては」「付き合いだから」と感じながら足を運ぶ飲み会は、本来の意味での交流とは言えないかもしれません。時間とお金、そして心のエネルギーを使う場だからこそ、本当に会いたい人と過ごす時間を大切にしたいものです。
こうした“手放すべきもの”を見直すと、私たちの生活にはまだまだ余白があることに気づきます。
そしてその余白は、新たな楽しみや心の豊かさを取り入れるスペースとなります。
では、着物のある暮らしを楽しむためにはどうすればよいのでしょうか。
その第一歩は、「着る機会を待つ」のではなく、「着る機会を自分でつくる」ことにあります。
「次はいつ着ようかな?」と考えることが、日常の中にわくわくした気持ちを生み出します。
特別な行事やイベントがなくても、ちょっとしたお出かけや、近所のカフェ、散歩、花を見に行くときなど、「着物を着ることそのもの」を目的にしてもいいのです。
着物を着ることが特別な出来事ではなく、日常の延長線にある“自分らしい選択”になれば、暮らしに彩りが加わり、心も晴れやかになります。
さらに、着物を着るという行為は、自分を大切にする時間を持つことにもつながります。鏡の前で丁寧に身支度を整えるひとときは、心を静かに落ち着け、今の自分と向き合う大切な時間です。
「生活から無くすと、豊かになるもの」は、決して“何かを我慢する”という意味ではありません。むしろ、「自分が本当に心地よいと感じるものを選ぶために、余分なものをそっと手放す」という選択です。
時間も心も身軽になったとき、本当に大切なものが見えてきます。そしてそのひとつが、着物という美しい文化であり、自分らしさを表現するひとつの方法であるのだと、私は思います。
日常にほんの少しの“非日常”を取り入れることで、暮らしの中に新しい風が吹き込みます。
その風に背中を押されるように、今日もまた、次はいつ着物を着ようかと心が動き出すのです。
着物を気軽に、でも丁寧に楽しみたいと思われた方は、どうぞご自身の“やりたい”という気持ちに素直になってみてください。麗和塾では、そんな想いを形にするお手伝いをさせていただきます。
暮らしを整え、心に余白を生み出すことが、着物のある豊かな日々の始まりになることでしょう。