着物で「今日をキレイに生きる」秘訣

着物着付け教室福岡  麗和塾  内村圭です。

美容家・IKKOさんの言葉に、「着物で今日をキレイに生きる秘訣」という一節があります。華やかで人を惹きつける印象の裏には、年齢を重ねるごとに変化する体や心と、真摯に向き合ってきた経験が込められています。

IKKOさんが着物を日常的に取り入れようと思ったきっかけは、40代から50代にかけて感じた体の変化だったそうです。40代のころは「美脚ですね」と褒められることが多かったのに、50歳を過ぎると脚のむくみが取れにくくなり、思うようにスタイルが保てない悩みを抱えるようになったといいます。女性なら誰しも、年齢を重ねる中で似たような変化を感じる瞬間があるのではないでしょうか。

そんな時、「どうすれば今の自分をもっと楽に、そして美しく生きられるか」を改めて考えたそうです。かつての理想を追い求めるのではなく、「今の自分」に合った美しさをどう表現するか――その答えを探す中で、自然と心が向かったのが、もともと大好きだった“着物”でした。

着物は、体のラインを無理に隠すのではなく、全体のバランスを整えながら美しさを引き立ててくれる装いです。特に、むくみが気になる脚や、少し気になるお腹周りも、帯で自然に引き締め、シルエットを美しく見せてくれます。布の重なりや腰の位置、帯の高さなど、ひとつひとつの所作の中に「女性を美しく魅せる工夫」が詰まっています。

そして何より、着物には「無理をせずに整える」力があります。若いころのように完璧を目指すのではなく、今の自分を受け入れながら、穏やかに、凛として美しく生きる。その心を支えてくれるのが、まさに着物なのです。

年齢を重ねると、体型や肌の変化、気力の揺らぎなど、すぐには解決できないことが増えていきます。けれど、それらを悲観するのではなく、「今日をどう美しく生きるか」という視点に立つことで、毎日は確実に変わっていきます。IKKOさんは、「着物こそが、その“今日をキレイに生きる”ことを叶えてくれる魔法のような存在」だと語ります。

確かに、着物をまとったときの背筋の伸びる感覚、裾さばきに自然と生まれる優雅な動き、帯を締めたときに心がすっと整うような感覚――それらすべてが、自分を大切に扱う意識へとつながります。忙しい日々の中でも、着物を着るという行為は、心を整え、今この瞬間を丁寧に生きようという意識を呼び覚ましてくれるのです。

また、着物には「その人の内面を映す鏡」という側面もあります。派手な色や柄でなくとも、清らかに整えられた装いは、落ち着いた品格を感じさせます。歳を重ねるごとに、外見だけでなく、立ち居振る舞いや言葉遣い、心の余裕といった“内面の美しさ”がにじみ出てくるもの。着物は、その内面の輝きをそっと引き出してくれる存在でもあるのです。

「若いころのように華やかではなくてもいい。今の私だからこそ映える美しさがある」――そのことに気づいたとき、年齢を重ねることが決してマイナスではなく、むしろ自然の流れとして受け入れられるようになります。着物を通して感じる“いまの美しさ”は、年齢に抗うのではなく、年齢とともに磨かれていくものなのです。

着物をまとうとき、私たちは自然と「姿勢を正す」「所作を整える」「言葉を選ぶ」ようになります。それは、見た目だけでなく心を整える行為でもあります。たとえ忙しい日常の中でも、ほんのひとときでも着物を通して“美しく生きる時間”を持つことは、自分を慈しむ行為そのものです。

IKKOさんの言葉にある「今日をキレイに生きる」とは、特別な日のことではありません。日々の暮らしの中で、自分を後回しにせず、丁寧に扱うこと。完璧でなくてもいい、理想通りでなくてもいい。ただ、“今の自分”を大切にして過ごすこと。それが、最も自然で美しい生き方なのだと思います。

年齢を重ねることは、見た目の変化だけでなく、経験や感性の豊かさを積み重ねることでもあります。その豊かさこそが、美しさの源です。着物は、その深みある魅力を包み込み、静かな輝きへと変えてくれます。

今日をどう生きるか。その答えは、誰かと比べるのではなく、自分の中にあります。着物を通して“今の私”を受け入れ、“今日をキレイに生きる”という心を持てたなら、それこそが本当の意味での美しさなのかもしれません。

――年齢を重ねるほどに、女性はしなやかに美しくなれる。その姿をやさしく包み、背中を押してくれるのが、着物という装いです。
「着物で今日をキレイに生きる秘訣」とは、外見の美しさを追うことではなく、自分を愛し、今を丁寧に生きる力を育てること。
それが、IKKOさんの言葉に込められた本当のメッセージなのだと思います。