「いつか」ではなく「今」から――着物を始めるタイミング

着物着付け教室  麗和塾  内村圭です。   

「そろそろ着物って思っているんです」

そんな言葉を耳にすると、私はいつも「それは、もう十分に“始めどき”ですよ」とお伝えしたくなります。なぜなら、その言葉の奥にはすでに“興味”や“憧れ”が芽生えているからです。そしてその気持ちは、実はとても大切で、尊いものなのです。

人は本当に興味がないことに対して、「そろそろ…」とは言いません。
「気になる」「やってみたい」「いつかは…」と思っている時点で、心はすでに一歩前へ進んでいます。あとは、その想いをどう扱うかだけなのです。

けれど私たちはつい、
「もう少し時間ができたら」
「落ち着いたら」
「準備が整ったら」
と、“先延ばし”を選んでしまいがちです。

ですが現実はどうでしょうか。
何年後かに計画を立てたとしても、生活環境は思い通りに変わってくれるとは限りません。特に女性は、家事や仕事、子育て、そしてその先には親の介護や孫の世話など、次々と役割が変化していきます。

「やっと自分の時間ができた」と思った頃には、
体力や気力が以前のようではなかったり、
新しいことを始める余裕がなくなっていたり……。

実際、私の周りにも
「あのとき始めておけばよかった」
「やりたかったけど、もう今さら無理で…」
と、少し寂しそうに話される方が少なくありません。

そして多くの方が、こうおっしゃいます。
「振り返ってみると、できない理由なんてなかったんですよね」と。

これはとても印象的な言葉です。
“できなかった”のではなく、“やらなかった”だけだった。
その事実に気づいたとき、人は少しだけ後悔の気持ちを抱いてしまうのかもしれません。

実は、やりたいことにも「旬」があります。
食べ物に“食べごろ”があるように、私たちの気持ちや体力、環境にも「今がちょうどいい」というタイミングがあるのです。

着物も同じです。
「いつか着たい」と思っている間に、気力や体力、そして環境が変わってしまうこともあります。
だからこそ私は、「やりたいと思った今こそが、いちばんの始めどき」だと思っています。

もちろん、いきなり完璧を目指す必要はありません。
着物を一式揃えなくてもいい。
毎日着る必要もありません。
まずは、話を聞いてみる。
一度着てみる。
教室をのぞいてみる。

それだけでも十分な一歩です。

大切なのは、「できる範囲から始めること」。
ほんの小さな行動でも、それは確実に未来につながります。
少しでも触れておけば、いざ時間や余裕ができたときに、ゼロからのスタートにならずに済みます。

「いつか着物」
「そろそろ着物」

その言葉が心に浮かんだのなら、それはもう立派なサインです。
今のあなたに、着物が必要だという合図なのかもしれません。

着物は、特別な人だけのものではありません。
人生の節目に、心を整え、自分と向き合うための大切な存在です。
そして、始めるのに遅すぎることは決してありません。

けれど、始めるのに「早すぎる」ということもないのです。

「やりたい」と思ったその瞬間を、大切にしてみてください。
その一歩が、これからのあなたの時間を、きっと今より豊かにしてくれるはずです。

“いつか”ではなく、“今”。
その選択が、未来のあなたを笑顔にしてくれるのだと思います。