日本人に生まれたことを楽しむ装い
着物着付け教室福岡 麗和塾 内村圭です。
「日本人は着物が似合う」とよくいわれますが、これは決して気のせいではありません。少し大雑把にいえば、今からおよそ百年ほど前までは、日本に暮らすほとんどすべての人が、日常的に着物を身にまとって生活していました。つまり、私たち日本人の体型や所作、感覚そのものが、長い年月をかけて着物とともに形づくられてきたのです。そのため、着物を着たときに自然としっくりくるのは、ある意味とても当然のことなのかもしれません。
実際に着物を身にまとうと、不思議と心が落ち着いたり、嬉しい気持ちが湧いてきたりするものです。畳の上に座ったときの感覚や、和室の静かな空気の中に身を置いたとき、「ああ、私は日本人なんだなあ」と、改めて実感する方も多いのではないでしょうか。普段は意識しない自分のルーツや文化が、着物を通してそっと心に浮かび上がってくるような感覚です。

また、日常生活の中でも、テレビドラマや映画、着物雑誌などを見ていると、意外な女優さんが着物姿で登場することがあります。その瞬間、「わあ、着物着てる!」と、思わず画面に見入ってしまった経験はありませんか。洋服姿は見慣れているはずなのに、着物を着ているだけで、まったく違う印象に見え、新鮮さとともに、これまで知らなかった一面を発見したような驚きが生まれます。
「さすが女優さん、素敵だなあ」と見とれてしまったり、以前よりもさらに好きになったりすることもあるでしょう。しかし、これは決して特別な人だけに当てはまる話ではありません。私たち一般の人でも、着物を着ることで、周囲から見える印象は大きく変わります。いつもとは違う雰囲気、新しい表情、そして少し背筋が伸びたような佇まいは、見る人に新鮮な驚きと好印象を与えてくれるのです。
着物の魅力のひとつは、洋服ではなかなか選ばないような色や柄にも、自然と挑戦できるところにあります。普段の服装では「ちょっと派手かな」「私には似合わないかも」とためらってしまう色合いでも、着物になると不思議としっくりきて、むしろ自分の魅力を引き立ててくれることがあります。これは、着物が持つ独特の配色やデザイン、そして全身で調和を取る構造によるものです。
また、「見た目を変える」ということは、気分を一新するうえでも大きな力を持っています。着物を着るだけで、自然と所作が丁寧になり、歩き方や立ち居振る舞いにも意識が向くようになります。鏡に映る自分の姿を見て、「いつもと違う私だな」と感じることは、心にも新しい風を吹き込んでくれます。忙しい日常の中で、気持ちがマンネリ化しているときこそ、装いを変えることは、とても効果的なリフレッシュ方法なのです。
着物は、単なる「昔の衣服」や「特別な日のための正装」ではありません。自分らしさを表現し、新しい自分に出会うための、ひとつの大切なツールでもあります。洋服とは違う魅力があり、日本人としての感性や美意識を、自然なかたちで呼び覚ましてくれる存在なのです。
今年は、思い切って着物を取り入れて、イメージチェンジをしてみませんか。特別な理由や完璧な準備がなくても構いません。まずは一度、袖を通してみるだけで十分です。その一歩が、これまで知らなかった自分自身の魅力に気づくきっかけとなり、日常に新しい彩りをもたらしてくれるはずです。着物は、私たち日本人に生まれたことを、そっと誇らしく感じさせてくれる、かけがえのない装いなのです。

