着物上達のための心構え
着物着付け教室福岡 麗和塾 内村圭です。
「今日は着物でお出かけしよう」と思っていたのに、いざ着付けを始めてみると衿元がうまく決まらない、帯がねじれてしまう、時間が足りない……。結局、諦めて洋服に着替えてしまった――そんな経験はありませんか?着物に親しみ始めた多くの方が、一度は通る道です。思い通りに着られない日は、決して「失敗」ではなく、上達へとつながる大切なプロセスです。
■ 「うまくいかない日」も練習のうち
着付けは、手順を重ねながら少しずつ身についていくものです。最初から完璧にできる人はいません。衿の合わせ方、帯の締め具合、裾の長さ――ほんの少しの力加減や手の動かし方で、仕上がりは大きく変わります。だからこそ、うまくいかなかった日は、「自分の手の感覚を知る練習をしている日」と捉えてみてください。
思い通りにいかないときほど、焦らず一つひとつの動作を確認しながら進めることが大切です。「急がば回れ」という言葉の通り、時間をかけて丁寧に着付けることで、次第に手順が身体に馴染んでいきます。慣れないうちは、着物を着る日には少し余裕をもって支度を始めるのがおすすめです。焦りが少なくなるだけで、仕上がりがぐんと安定します。
■ 着物上達のための4つのポイント
「もっと気軽に着られるようになりたい」と思うなら、少しの工夫で上達のスピードが変わります。
① 着用前のイメージトレーニング
着付けを始める前に、どんな流れで着るのかを頭の中でイメージしてみましょう。衿を合わせる角度、帯を巻く位置などを思い浮かべておくことで、手の動きがスムーズになります。慣れないうちは、動画や写真を見ながらシミュレーションするのもおすすめです。
② 予定を「なかったこと」にしない
「うまく着られなかったからやめておこう」と思うと、その日の学びが途絶えてしまいます。多少着崩れても構いません。羽織やショールを重ねれば、意外とカバーできるものです。完璧を目指すより、「とにかく出かけてみる」ことを優先しましょう。その一歩が、次の自信につながります。
③ 行動することでコツをつかむ
着付けの上達には、知識よりも実践の積み重ねが欠かせません。何度も手を動かし、失敗しながら覚えていく過程こそが、着物美人への近道です。上手くいかない日こそ、次に活かせるヒントがたくさん隠れています。
④ 羽織などを上手に活用する
少し衿元が崩れてしまっても、羽織やストールを重ねると全体の印象が整います。季節やシーンに合わせた羽織は、コーディネートのアクセントにもなり、安心感を与えてくれます。「失敗を隠す」のではなく、「おしゃれにアレンジする」つもりで取り入れてみましょう。
■ 諦めない心が、上達のカギ
「うまくいかない」と感じた瞬間に諦めてしまうと、そこで成長は止まってしまいます。でも、少しでも「やってみよう」と続けた人には、必ず変化が訪れます。最初は崩れてしまった帯も、何度か挑戦するうちに自然と手が動くようになり、気づけば自信を持って出かけられるようになるのです。
着物の世界では、「思い通りにいかない経験」こそが、次への糧になります。上手くいかなかった日も、次への学びを与えてくれる大切なステップ。そう考えると、少し気持ちが軽くなりませんか?
また、着物は一枚一枚に個性があり、素材や仕立てによって着心地が微妙に異なります。同じように着ても、毎回違う感覚になるのは当然のこと。だからこそ、その日の出来栄えを「うまくいった・いかなかった」で判断するのではなく、「今日はこの着物でここまでできた」と、自分の努力を認めてあげましょう。
■ 「良かった探し」で前向きに
着物を着終えたら、全体を鏡で見ながら「今日はここが良かった」と自分を褒める時間を持ってみましょう。衿のラインがきれいに出た、帯の高さが前回より安定した――たとえ小さなことでも構いません。自分の成長を意識することで、次の挑戦が楽しみになります。
逆に、「ここはもう少し工夫したい」と感じた部分があれば、それも大切な気づきです。次に生かすためのメモを残しておくと、着付けノートのように自分だけの記録ができあがります。
■ 続けることでしか得られない自信
着物の着付けは、頭で覚えるより、身体で覚えるものです。何度も手を動かし、試行錯誤を重ねるうちに、自然とコツがつかめていきます。最初はうまくいかないのが当たり前。だからこそ、続けることでしか得られない「感覚」が育ちます。
そして、その積み重ねの先には、着物を着ることが特別ではなく、自然な日常の一部となる瞬間がやってきます。「今日は着物で出かけよう」と思い立ったら、迷わず手を伸ばせる――そんな自分になれたとき、過去の苦労もすべて笑顔に変わるはずです。
思い通りに着られない日こそ、自分を育てる大切な時間です。うまくいかないからこそ、次の工夫が生まれ、着物との距離が少しずつ縮まっていきます。
着物を着るという行為は、単なるおしゃれではなく、自分自身と向き合う時間でもあります。焦らず、比べず、自分のペースで続けていくことが何より大切です。
「今日の私はここが良かった」「次はもう少しこうしてみよう」――そんな前向きな気持ちを重ねていけば、きっと着物をまとう時間が、今よりずっと心地よく、楽しいものになるでしょう。
どうか諦めないでください。思い通りにいかない日も、あなたの成長の証です。その一歩一歩が、いつか“理想の着姿”へとつながっていくのですから。



