季節を彩る羽織ものの魅力
着物着付け教室福岡 麗和塾 内村圭です。
一般的に、着物のコートを着用する季節は「紅葉が色づく頃から桜が散る頃まで」といわれています。秋が深まり、朝晩の冷え込みを感じるようになると、いよいよ着物の上に羽織るコートが恋しくなる季節ですね。
けれども、着物のコートは単なる防寒着ではありません。洋服のコートと同じように考えがちですが、実は着物ならではの役割や楽しみ方がたくさんあります。
もちろん、寒い季節に暖かく過ごすための防寒という目的もありますが、それだけではないのです。
例えば、夏の暑い時期には冷房対策として、また春先には気温の変化に合わせた温度調節としても活躍します。さらに、外出時のほこりやちりを防ぎ、大切な着物や帯を汚れから守るという実用的な役割もあります。
特に、電車や車での移動、街中を歩くときなどには、コートを一枚羽織っておくと安心です。帯や着物を人混みで引っ掛けたり、汚したりする心配も軽減できます。
また、着物の「帯付き姿」が少し苦手という方もいらっしゃいます。帯付き姿とは、着物に帯を締めた状態で、コートや羽織などを着用していない装いのこと。そうした方にとっても、羽織ものは心強い味方です。

最近では、季節を問わず着用できる四季のコートもあります。素材や仕立てを選べば、夏から冬まで幅広い時期に活用できるものもあり、着物を楽しむうえで一枚持っていると重宝します。
コートの素材もとても豊富です。
縮緬(ちりめん)、倫子(りんず)、紬、交織、別珍、レースなど、それぞれに異なる風合いや表情があります。光沢のあるもの、しっとりとした質感のもの、透け感を楽しめるものなど、素材によって着物姿の印象も変わります。
色や柄の選び方にも、着物ならではの楽しみがあります。
黒はコートの色として格調高く、落ち着いた印象を与えてくれます。また、絵羽模様と呼ばれる、背縫いをまたいで一枚の絵のようにつながる柄や、紋の入ったものは、改まった場面にもふさわしい装いになります。
もちろん、普段のお出掛けには、季節感のある色柄や遊び心のあるデザインを選ぶのも素敵です。着物や帯との組み合わせを考えながら、自分らしい一枚を見つけるのも楽しみのひとつですね。
さて、コートには衿の形によってさまざまな種類がありますが、その中でも特に重宝するのが「羽織」です。
羽織は、洋服でいうカーディガンのような存在。コートとは異なり、室内でも着たままで過ごせるという便利さがあります。お食事やお買い物、お友達との集まりなど、ちょっとしたお出掛けにも気軽に取り入れられます。
羽織は防寒だけでなく、着物姿の印象を変えるおしゃれアイテムでもあります。着物と帯だけでは少し物足りないと感じるときも、羽織を一枚加えることで、全体の雰囲気がぐっと変わります。
色合わせや柄合わせによって、知的で落ち着いた印象にも、華やかで個性的な印象にも仕上がります。
ただし、羽織を選ぶ際にはサイズにも気を配りたいところです。
着物コートは、お太鼓結びにした帯を考慮して、身幅にゆとりを持たせて仕立てられています。一方、サイズの違いが目立ちやすいのが羽織です。
羽織の衿は、着物の衿の横から下に向かって、自然に真っ直ぐ落ちるように整っているのが理想的です。ところが、羽織が大きすぎると、羽織の衿と着物の衿が下の部分でくっついてしまい、すっきりとした着姿にならないことがあります。
反対に、小さすぎる場合には、羽織紐を結ぶのが難しくなることもあります。
羽織は着物の上に重ねるものだから、多少大きくても大丈夫と思われがちですが、実際にはサイズ感が着姿の美しさを左右します。購入するときには、肩幅や身幅だけでなく、衿の収まりや羽織紐の位置なども確認しておきたいですね。
そういえば、着物友達のひとりに、なかなかの強者がいらっしゃいます。
「羽織紐を結ぶのが面倒だから、最初から付けない派なの」とおっしゃるのです(笑)。
着物の楽しみ方は人それぞれ。きちんと整えることも大切ですが、自分が心地よく楽しめる方法を見つけることも、長く着物と付き合っていく秘訣なのかもしれませんね。
着物のコートは冬だけのものではありません。防寒、温度調節、汚れ防止、そしておしゃれ。季節や用途に合わせて使い分けることで、着物のお出掛けがさらに快適で楽しくなります。
個人的には、これからの季節に着るコートの雰囲気が大好きです。
秋から冬へと移り変わる空気の中で、着物に一枚羽織るだけで、装いに深みと季節感が生まれます。歩く姿にも、どこかしっとりとした趣が加わるように感じますし着物上級者の感じもします。
着物と帯の組み合わせを楽しむように、コートや羽織もぜひ装いの一部として楽しんでみてください。
いつもの着物姿に一枚プラスするだけで、新しい自分に出会えるかもしれません。
コートを楽しむ季節の到来。皆さまも、お気に入りの一枚をまとって、秋から冬のお出掛けを楽しんでみませんか。

