“習うより慣れろ”で叶える美しい着物姿
着物着付け教室 麗和塾 内村圭です。
「着物を気軽に着てみたい」――そう感じたことのある方は、決して少なくありません。
けれどもその一方で、「一人で着るのは難しそう」「手順が複雑で面倒に思える」といった理由から、最初の一歩を踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。
その気持ちはよくわかります。確かに、着物には洋服とは違う特有の手順や決まりがあり、初めての方にはハードルが高く感じられるかもしれません。ですが、それはあくまでも「慣れていない」だけ。着物は、繰り返し袖を通すことで自然と身につき、自分なりの着こなしができるようになるものです。
以前、ある男性経営者の方から伺った印象的な言葉があります。
それは「ミッション(目的)」「パッション(情熱)」「アクション(行動)」の3つがそろえば、大抵のことは実現できる、というものです。
この考え方は、着物に挑戦する際にもぴったり当てはまります。
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ミッション(目的):「着物を着られるようになりたい」「自分らしい装いを楽しみたい」
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パッション(情熱):「和の美しさを体験したい」「伝統文化に触れたい」
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アクション(行動):「とにかく着てみよう」「学びながら慣れていこう」
こうした想いを持って一歩を踏み出せば、どなたでも着物のある暮らしを始められるのです。
「習うより慣れろ」ということわざにもあるように、着物を上手に着られるようになるための一番の近道は、実際に着る回数を増やすことです。初めは時間がかかったり、形が整わなかったりするかもしれませんが、回数を重ねていくうちに自然とコツが掴め、短時間で美しく着こなせるようになります。
もちろん、基本を押さえておくことも大切です。
着物姿を美しく見せるためには、特に気をつけたい3つのポイントがあります。
1. 衿合わせ
衿は顔周りの印象を左右する大切な要素です。きれいなV字に整えられているか、左右のバランスは取れているかを確認しましょう。衿元が詰まりすぎたり、緩すぎたりすると、せっかくの着物姿も残念な印象になってしまいます。
2. 帯の位置
帯の高さや締め方も、全体の印象に大きく影響します。帯の位置が低すぎると野暮ったく見え、逆に高すぎると落ち着きがなく見えてしまいます。年齢や体型に合った位置で、しっかりと締めることが大切です。
3. 裾つぼまり
裾はややすぼまったシルエットにすると、着物ならではの美しさが際立ちます。スカートのように広がってしまうと、着崩れたような印象になりますので、下前・上前の重ね方を工夫し、すっきりとしたラインを意識しましょう。
この「衿・帯・裾」の3点に気を配るだけで、着姿の完成度はぐっと高まります。
出かける前に鏡の前で最終チェックを行う習慣を持つことが、着物を美しく着こなす秘訣です。
また、初めのうちは「完璧に着なければ」と気負わなくても大丈夫です。
大切なのは、着物を楽しむ気持ちと、自分の中にある「和の感性」に素直になること。
着物は、型にはまったものではなく、自分らしさを表現するための自由な装いでもあります。
帯や小物、半衿の組み合わせで、同じ着物でもまったく違う印象になります。
季節に合わせて色や素材を楽しむ、帯結びで雰囲気を変える、草履やバッグで遊び心を加える。
そうした工夫を通じて、少しずつ自分なりのスタイルが育っていきます。
着物を特別な日のためだけのものにせず、普段の生活に取り入れていくことも、無理なく慣れていくための方法です。
例えば、ご近所へのお出かけ、カフェでの読書、美術館巡りなど、ちょっとした用事にも着物を選んでみてください。
一枚羽織るだけで気持ちが引き締まり、いつもの景色が新鮮に映ることに気づくでしょう。
「着物は難しそう」と感じていた方も、実際に袖を通してみることで、その楽しさや奥深さを実感されるはずです。
一人で着られるようになることがゴールではなく、着物を通して「自分らしさ」や「季節の移ろい」「日本の美意識」に触れる時間を持つことが、何よりも価値ある経験になります。
まずは小さな一歩から。
お気に入りの一枚を取り出して、「今日はちょっと着てみようかな」と思ったその気持ちを大切にしてください。
回数を重ねることで、自信が生まれ、着物はきっとあなたにとって、もっと身近で愛しい存在になっていくでしょう。