自分らしい着物生活を叶えるために
着物着付け教室 麗和塾 内村圭です。
理想の着物生活を実現するためには、実は特別な才能や完璧な技術よりも、ほんの少しの「考え方のコツ」が大切だと言えます。着物に憧れはあるけれど、なかなか日常に取り入れられない、着てみたい気持ちはあるけれど一歩が踏み出せない、そんな想いを抱えている方は少なくありません。しかし、まず知っていただきたいのは、「理想の着物生活」は人それぞれ違っていて、正解はひとつではないということです。
毎日のように着物を着て過ごしたい方もいれば、月に一度のお出かけを楽しみにしたい方、特別な行事のときだけ着たい方もいらっしゃるでしょう。どの形であっても、それが「あなたにとって心地よいかどうか」が何より大切なのです。他人の基準や理想像に合わせる必要はなく、あなたにはあなたらしい着物との付き合い方があります。そのことをまず、安心して受け止めていただきたいと思います。

その上で大切なのが、「人にどう思われるか」よりも、「自分はどうしたいのか」を考えることです。私たちは無意識のうちに、周囲の目を気にして行動を控えてしまいがちです。「着物を着ていると目立つのではないか」「変に思われないだろうか」「浮いてしまわないだろうか」――そんな不安が頭をよぎり、せっかくの気持ちにブレーキをかけてしまうこともあるでしょう。
たとえば、「着物を着ているとジロジロ見られるのが嫌」という声をよく耳にします。しかし実際には、その視線の多くは否定的なものではなく、「素敵だな」「いいな」「きれいだな」といった、憧れや好意の気持ちであることも少なくありません。着物姿は日常の中ではまだ珍しい存在だからこそ、自然と目に留まりやすいだけなのです。それを「注目されている=否定されている」と受け取るか、「関心を持ってもらえている」と受け取るかで、気持ちは大きく変わってきます。
また、「一緒に着物で出かける人がいないから…」という理由で、着物を着ることを諦めてしまう方も多いものです。しかし、よく考えてみると、最初から着物仲間が揃っている人の方が珍しいのではないでしょうか。誰かが行動を起こさなければ、着物友達が増えることもありません。まずは自分が着物を着て外に出ること、それが新しいご縁や出会いのきっかけになるのです。
さらに、「どこに行くの?」「何があるの?」と、いちいち聞かれるのが面倒で…という声もあります。そんなときは、「ちょっとした集まりに着物で行く約束をしたから」「今日は気分転換に着物で出かけるの」と、軽く答えるだけで十分です。最初は戸惑いがあっても、二度三度と繰り返すうちに、自然と受け答えにも慣れてきますし、周りの人の見る目も少しずつ変わっていくものです。
大切なのは、着物に興味や関心のない周囲の価値観に合わせすぎないことです。「やってみたかったのに、結局やらなかった」「本当は着たかったけれど、諦めてしまった」――そんな後悔や未練は、意外と心の奥に残り続け、あとから自分を苦しめてしまうことがあります。反対に、小さくても楽しい経験を積み重ねていくことは、自分への信頼や自信へとつながっていきます。
着物を着て出かけてみて、「思ったより楽しかった」「意外と大丈夫だった」「褒めてもらえて嬉しかった」――そんな体験がひとつ増えるごとに、「私にもできる」「私の選択は間違っていなかった」という実感が生まれます。その積み重ねこそが、理想の着物生活を支える土台になるのです。
最初から完璧を目指す必要はありません。毎日着なくてもいいですし、遠くへ出かけなくても構いません。近所のカフェやお友達とのランチ、ちょっとしたお買い物でも十分です。まずは「できるところから」「無理のない範囲で」一歩踏み出してみましょう。その小さな行動が、やがてあなたらしい着物生活を形づくり、日常に新しい彩りと喜びを運んでくれるはずです。
着物は、誰かのために着るものではなく、本来は「自分の心を満たすため」のものです。周りの声よりも、自分の気持ちに耳を澄ませながら、あなたらしいペースで、あなたらしい着物の時間を楽しんでいきましょう。


