美しい着姿のための基本と心がけ

福岡着物着付け教室 麗和塾内村圭です。

着物を楽しむうえで欠かせないのが「着付け」です。自分で着物を着られるようになると、日常の中に和の美しさを取り入れることができ、生活そのものが豊かに感じられるようになります。しかし、着物を上手に着こなせるようになるまでには、誰もが一度はさまざまな悩みに直面するものです。

着物を着ていて、「なんだか今日は機嫌よく過ごせる」と感じた経験はありませんか?その一方で、着崩れが気になったり、鏡を見るたびに「あれ?」と違和感を覚えたりして、せっかくのお出かけが楽しめなかった……そんな思いをしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

着物は、着付けが上手くいくと自然と背筋が伸び、気持ちもシャキッと整います。しかし一方で、着方が少しでも乱れていると、それが一日中気になってしまい、せっかくの着物時間が半減してしまうのも事実です。

よくある着付けの悩みとその原因

着付けの際によく耳にする代表的なお悩みを以下の通りです。

1. 衣紋(えもん)が詰まってしまう

首の後ろに抜け感をつくる「衣紋」は、着物姿を美しく見せる重要なポイントです。ここが詰まってしまうと、全体のバランスが悪く見えてしまう上に、首周りが苦しく感じられることもあります。原因として多いのは、衣紋を引くタイミングが遅かったり、伊達締めなどで固定する前に整えられていない場合です。

2. 着物の裾が広がってしまう

着物の裾が広がると、せっかくのラインが乱れてしまい、もたついた印象を与えてしまいます。この原因は、腰紐の位置や締め方、着丈の調整不足などにあることが多いです。腰でしっかりと着丈を決め、下半身の布を落ち着かせるように意識すると、広がりを抑えることができます。

3. おはしょりがすっきり見えない

おはしょりがごちゃついて見えると、せっかくの着物もだらしなく見えてしまいます。左右の長さが揃っていなかったり、布がもたついてしまうのが原因ですが、これも着丈の調整や腰紐の締め方、または補整の仕方に影響されることがあります。

4. 帯揚げの始末がうまくいかない

帯揚げは着姿のアクセントであり、上品さを演出するアイテムです。ここがモタついてしまうと、全体の印象が締まらなくなってしまいます。ふんわりと自然に見せつつ、しっかりと固定するためには、畳み方や帯枕の位置の工夫が必要です。

手順だけでなく「姿勢」も大切に

着付けにおける意外な落とし穴として、「姿勢」があります。着物は着る過程での姿勢が、そのまま着姿に表れてしまうもの。慣れないうちは、どうしても手元を見ながら着付けをしてしまいがちですが、この「前かがみ」の姿勢こそ、着崩れや仕上がりの不満につながる大きな原因です。

たとえば、

  • 身丈や身幅を決めるとき

  • おはしょりを整えるとき

  • 衿を作るとき

このような場面で手元に集中するあまり、姿勢が丸まってしまうと、着物のラインが崩れやすくなり、全体がだらしなく見えてしまいます。

鏡の前で「正面を見て着付ける」習慣を

鏡を正面に置いていても、実際には手元ばかりを見ている……というのはよくあることです。しかし、鏡を見ることで、着姿全体のバランスや後ろ姿まで意識できるようになり、自然と美しいラインが整ってきます。

習慣として大切にしたいのが、

  • 鏡を見ながら、正面を向いて着付けをすること

  • ひとつひとつの動作をゆっくり丁寧に行うこと

  • 自分の姿勢を意識しながら作業すること

これらを心がけるだけで、驚くほど着付けが楽になり、仕上がりの満足度も高まります。

着付けの悩みは一人ひとり違うからこそ、原因を見つけることが大切

「手順は完璧に覚えたのに、どうしても仕上がりがイマイチ……」そんなときは、自分のやり方に合った見直しが必要です。着物の着付けは、マニュアル通りに行えば必ず成功するものではなく、その人の体型や癖、使う道具によって微調整が必要になります。

たとえば、同じ帯結びでも、背中の丸みや腰の高さによって見え方が変わるように、正解は一つではありません。だからこそ、一度自分の着付けの様子を動画で撮ってみる、または誰かに見てもらうことで、意外な原因がわかることもあります。

快適な着物時間のために

着物は「着るもの」であると同時に、「自分と向き合う時間」を与えてくれる存在でもあります。うまく着られなかった日があったとしても、それは次への学びです。毎回ほんの少しずつでも、改善していくことで、必ず着姿は美しくなっていきます。

そして、自信を持って着られるようになると、気持ちまで晴れやかになり、着物で過ごす時間そのものが大切で愛おしいものになります。

着付けに悩みはつきものです。しかし、その一つひとつを見つめ直し、丁寧に改善していく過程こそが、着物とともに過ごす楽しみの一部でもあります。自分だけの着姿を見つけていく旅は、奥深く、豊かな時間です。

少しの工夫と意識の変化で、今までよりももっと快適に、もっと美しく着物を楽しむことができるはずです。どうぞあなたも、自分に合った着付けを見つけ、心地よい着物ライフをお楽しみください。