着物がもっと身近になる第一歩

福岡着物着付け教室 麗和塾  内村圭です。

「着物を着てみたいな」──そう思われたきっかけは、人それぞれにあることでしょう。譲り受けた大切な一着を着てみたい、季節の行事や式典にふさわしい装いをしたい、時間や心に余裕ができた今こそチャレンジしてみたい──あるいは、日常とは違う自分に出会ってみたい。長年心の片隅にあった「いつかは」という想いを、そろそろ現実にしてみたい。そんな思いが芽生えた時こそが、着物生活のはじまりです。

着物には、洋服とは異なる魅力があります。たとえば体型の変化に柔軟であるということ。洋服ではサイズの合わないことが気になることもありますが、着物は寸法がある程度合っていれば、着付けの工夫次第で美しく着こなすことができます。そのため、年齢を重ねたあとも、長く愛用できるというのも大きな魅力です。

また、着物を自分で着ることができるようになると、その楽しみは一層広がります。誰かにお願いして着付けをしてもらう場合、着るたびに時間や費用の負担が発生します。しかし、自分の手で着付けができれば、そうした心配から解放され、もっと自由に、もっと気軽に着物を楽しむことができるようになります。

「着物は特別な場に着るもの」と思われることも多いですが、決してそうとは限りません。日常のちょっとしたお出かけや、お稽古事、お友達とのお茶の時間など、様々なシーンで気軽に楽しむことができるのが着物の良さです。自分で着られるようになると、着物は“非日常”から“日常の装い”へと変化していきます。

そしてもう一つ、自分で着物が着られることには、大きな自信がともないます。「一人で着られるようになった」「帯もきれいに結べた」といった小さな成功体験が、自分自身の成長を実感させてくれます。それはただの技術の習得にとどまらず、自己肯定感を高めてくれる貴重な機会とも言えるでしょう。

しかしながら、「私は不器用だから」「覚えられる自信がない」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。けれど、どうかご安心ください。着物の着付けは、たしかに最初は少し戸惑うこともあるかもしれませんが、基本の手順といくつかのコツさえ身につければ、誰にでも必ずできるようになります。

実際、多くの方が初めて着物に触れ、「自分には無理かも」と思いながらも、続けていくうちに自然と着られるようになり、今では日常の中で着物を楽しんでおられます。覚えた分だけ着る機会が増え、着るたびに少しずつ上達していく。そうした積み重ねが、自分自身の新たな魅力を引き出してくれるのです。

また、着物を自分で着るということは、自分の感性でコーディネートを楽しむことができるということでもあります。季節に合わせた色や柄、小物の選び方、帯の組み合わせなどを自分の手で選ぶ楽しさは格別です。最初はシンプルな装いから始めても、次第に自分らしいスタイルが確立されていくことでしょう。

着物は決して遠い存在ではありません。ちょっとした興味や憧れから始まって、「一歩踏み出してみよう」と思ったその瞬間から、着物生活の扉は開かれています。誰でも、いつからでも始めることができるのが着物の魅力であり、奥深さでもあります。

ご自身の手で着物を身にまとうという体験は、日々の暮らしを豊かにし、心に新たな彩りを添えてくれます。「着物を着てみたい」と思ったその気持ちを、どうか大切にしてください。ほんの少しの勇気と継続があれば、その夢は現実となり、きっと想像以上の喜びが待っているはずです。

ぜひ、自分で着物を着る第一歩を踏み出してみてください。着物を通じて広がる世界が、あなたの日常に新しい輝きをもたらしてくれることでしょう。