着物で表現する自分らしさ
着物着付け教室福岡 麗和塾 内村圭です。
“個性”とは、誰かと違う格好をしたり、目立つ言動を取ることではありません。
本当の個性とは、自分の内側にある「ありのままの自分」と誠実に向き合い、それを丁寧に表現して生きること。その姿こそが、自然と周囲の目には「その人らしい」と映り、“個性的”と称されるのだと思います。
この考え方は、禅の言葉である「主人公」という教えにも通じています。
私たちは皆、それぞれの人生という物語において、自分が“主人公”です。他の誰かの人生ではなく、自分自身の物語をどう生きるか。その主役として生きるために必要なのは、特別な才能ではなく、行動する勇気と、前に進む力なのです。
■ 着物への憧れが教えてくれる“変わりどき”
着物に対する憧れの気持ち。それは「あなたの内側にある本音」が静かに語りかけているサインかもしれません。
たとえば、街ですれ違った美しい着物姿に心を奪われたとき。
洗練されたコーディネートに思わず見とれたとき。
「わあ、素敵!」「こんな着物を着てみたいな」と思ったその瞬間、心は確かに“動いて”いるのです。
ところが、そんな気持ちが湧いたときに、
「どうせあの人だから似合うんだ」
「私には無理」「そんなの現実的じゃない」
と、自分の本音にフタをしてしまうことはありませんか?
そうして心の声に耳を傾けずにいると、憧れはやがて他人事のままで終わってしまいます。
素敵だと思った誰かと自分の間に線を引き、自ら“傍観者”の立場に退いてしまうのです。
ですが、その憧れの正体こそ、今の自分から少しだけ変わりたい、前に進みたいという気持ちの現れなのではないでしょうか。
「こんな風になりたいな」と思ったときこそが、変化のタイミングなのです。
■ 他人の魅力を“自分の糧”にするには
誰かの素敵な姿に憧れたり、羨ましく思ったりすることは、決して悪いことではありません。
大切なのは、その感情をどう受け止め、どう自分の中に取り入れていくかです。
「あの人のコーディネート、すごく素敵」
「どうしてあの人は、あんなに自然に着物を着こなせるのだろう?」
そう思ったときに、自分には何ができるかを考えてみるのです。
・まずは、自分が惹かれたポイントを見つける
・似合う色や柄を調べてみる
・手持ちの着物に合わせて帯や小物を工夫してみる
このように、他人の魅力を“参考”にしながら、自分に合うものを取捨選択していく中で、少しずつ“自分らしさ”が見えてきます。
最初は真似でも構いません。繰り返すうちに、自分の中での好みやスタイルがはっきりしてきて、「私らしい着物姿」が形づくられていくのです。
■ 「なりたい自分」に向かって歩き出す
「あんな風になりたい」「こんな私になれたら」──
そんなふうに思う気持ちが生まれたとき、それは今の自分を変えたいという前向きな欲求です。
その思いに素直に従い、一歩を踏み出す人と、
「どうせ無理」と諦めて、ただ遠くから眺める人とでは、
やがて大きな差が生まれていくでしょう。
自分らしく生きるということは、「私はこうなりたい」と明確に描き、それに向かって行動することです。
たとえ今は自信がなくても、少しずつでも自分の理想に近づこうとする歩みそのものが、“個性”を育てていくのです。
そして、着物という装いは、そうした“自分を変えたい”という思いに非常に寄り添ってくれる存在でもあります。
着物を着ると自然と所作が丁寧になり、自分を大切にする気持ちが生まれます。鏡に映る自分の姿から、自信と誇りを取り戻すきっかけにもなるでしょう。
■ 着物を通じて“物語の主人公”になる
禅語の「主人公」は、自分自身の人生を生きる覚悟と責任を表す言葉です。
私たちは皆、自分という物語の主役であり、シナリオを進めるのは他人ではなく、自分自身です。
着物を着るという行動も、その物語を前に進めるための“ひとつの決断”です。
最初は小さな一歩かもしれません。でも、憧れを素直に受け入れ、自分の中の本当の気持ちに従って行動を起こせば、それが物語のターニングポイントになるのです。
■ 最後に──憧れを自分のものにするために
人を羨んで終わるのではなく、「自分ならどう取り入れるか?」と考える。
“できない理由”を探すよりも、“どうすればできるか”を問いかける。
そして、「こんな私になりたい」と思ったら、まずはその理想に向かって行動してみる。
着物は、そんな“なりたい自分”に向かうあなたを、そっと後押ししてくれる存在です。
憧れたその瞬間が、きっとあなたにとっての“変わりどき”。
着物を通じて、自分らしさを育み、人生の主人公としての一歩を踏み出してみませんか?
その先には、あなただけの物語が、美しく花開いていくことでしょう。