時代とともに変わる着物との向き合い方

着付け教室  麗和塾  内村圭です。

「たんすの肥やしになっている着物」と聞いて、皆さまはどのような着物を思い浮かべるでしょうか。実は、その中でも特に多いのが、嫁入りの際に誂えられた着物だと感じています。

今ではあまり見られなくなりましたが、私が若い頃――およそ三十年ほど前までは、結婚の際に着物を嫁入り道具のひとつとして持たせてもらうことが一般的でした。留袖や訪問着、喪服など、将来困らないようにと一式揃えてくれた親心には、今振り返っても胸が温かくなります。「着物を持っていないことで、恥ずかしい思いをしないように」。そんな思いが込められていたのでしょう。実際に着る機会が多くなかったとしても、持たせてもらったこと自体に、深い愛情と配慮を感じ、心から感謝しています。

しかし、時代は大きく変わりました。生活様式も価値観も変化し、「着るかどうかわからない着物を揃えるよりも、海外旅行に行きたい」「思い出に残る体験にお金を使いたい」という考え方が主流になってきました。結婚=着物を誂える、という時代ではなくなり、着物は“必要なもの”から“選択するもの”へと位置づけが変わってきたように思います。それ自体は、決して悪いことではありません。時代に合わせて価値観が変わるのは、ごく自然なことです。

その一方で、かつての親心によって誂えられた着物たちが、今もなお、たんすの奥で静かに眠っている現実があります。中でも、最も着る機会が少ない着物は何かと問われれば、多くの方が「喪服」と答えられるのではないでしょうか。喪服は、必要な場面が限られており、頻繁に着るものではありません。そのため、「持ってはいるけれど、一度も袖を通していない」「仕立てたまま何十年も経っている」という方も少なくないのです。

そこで私は、ひとつの提案として、喪服をそのままにしておくのではなく、附下げに型染めし直し、黒地のシンプルな着物として生まれ変わらせることをおすすめしています。喪服としてだけの役割を終えさせるのではなく、工夫を加えることで、普段のお出かけや少し改まった場にも着られる着物へと変えるのです。喪服のまま“たんすの肥やし”にしておくよりも、着る頻度の高い一枚に生まれ変わらせることは、着物を本当の意味で活かす方法のひとつだと考えています。

実際にこのような形で着物を活用されたお客さまからは、「こんな方法があるなんて知らなかった」「思い出の着物を、また着られるのが嬉しい」と、大変喜ばれています。親から受け継いだ着物に、新しい役割を与え、今の自分の暮らしに寄り添う一枚として蘇らせる――それは、過去と現在をつなぐ、とても豊かな選択ではないでしょうか。

着物は、決して特別な日のためだけのものではありません。少し視点を変え、工夫を加えることで、今の生活の中で再び輝きを放つ存在になります。たんすの奥で眠る着物たちに、もう一度目を向けてみてください。そこには、思い出だけでなく、これからの時間を彩る可能性が、まだ静かに息づいているのです。