自分で着物を着る心地よさ

着物着付け教室福岡  麗和塾  内村圭です。

着物をきれいに着こなせていても、帯が美しく結べていても、着ている本人が苦しければ心から楽しむことはできません。どれほど見た目が整っていても、「苦しい」という感覚が心のどこかに残っていると、着物への憧れや喜びが少しずつ薄れてしまいます。本来、着物は体の軸を整え、背筋を自然と伸ばし、心までも凛とさせてくれる心地よい衣服です。そのはずが、着付けによって“苦しいもの”になってしまうのは、とても惜しいことです。

着物を自分で着られない場合は、着付けをお願いすることになります。しかし、実際に着付けを依頼した方からは、次のような声を耳にすることがあります。

「着姿は褒められたけれど、苦しくて食事が楽しめなかった」
「身体を動かしにくく、長時間でぐったりしてしまった」
「紐がくい込んできて痛くなった」

こうした声は決して少なくありません。せっかくの特別な時間が、苦しさの記憶に変わってしまうのはとても残念です。本来の着物は、帯や紐の締め具合によって体を支え、姿勢を整えることで“快適”であるはずなのに、その魅力が十分に発揮されていないと言えるでしょう。

一方で、自分で着物を着られるようになると、紐の締め具合や位置を適切に調整でき、自分に合った心地よい着姿をつくることができます。もし着崩れても、その場で直すことができるという安心感もあります。

実は私自身も、コロナ前にあえて「体験のために」と人に着付けをお願いしたことがあります。普段は自分の感覚で心地よい位置に帯や紐を配置していたため、他の方の手による着付けは、驚くほど違和感がありました。その経験を通して、自分で調整できることの心強さをあらためて実感しました。

もちろん、「習うより慣れろ」という言葉にも一理ありますが、着ていて苦しい状態が続けば、着物に対する気持ちは後ろ向きになってしまいます。「また着たい」と思えなければ、着る回数は自然と減っていきます。だからこそ、自分自身でできることを増やし、快適で美しい着姿を作れるようになることが大切です。

着付けの技術を身につけることは、単に“自分で着られるようになる”というだけではありません。苦しくない、快適な着姿をつくる第一歩でもあります。自分で着られるようになれば、長時間の外出でも過ごしやすく、動作も自然になり、心にゆとりが生まれます。そのゆとりが、着物時間をより豊かなものに変えてくれます。

着物は、ただ着るだけではなく、着姿を整える時間も含めて楽しむものです。自分で着付けができれば、紐や帯の位置、締め具合を今日の体調に合わせて微調整でき、「自分のための装い」を作る喜びが増していきます。気づけば、鏡の中の姿に小さく微笑む自分がいる。そんな“好きな自分”に出会えるのも、自分で着付けができるからこそ得られる特別な体験です。

とはいえ、初めから完璧を目指す必要はありません。まずは基本を覚え、少しずつ体に馴染ませていけば大丈夫です。苦しくない着付けは「感覚」が大切で、その感覚は回数を重ねることで自然と育っていきます。

もしあなたが「着物に取り入れたい何か」を感じているなら、その気持ちは大切な最初の一歩です。着物に憧れを抱く理由は人それぞれですが、少しでも自分の中に“着物を楽しみたい気持ち”があるのなら、ぜひその思いに寄り添ってみてください。

まずは、大人シックで落ち着いた色柄の着物から始めると、気負いなく着物のある時間を楽しめます。着心地の良い着付けができるようになれば、着物は特別な日の衣服ではなく、“自分を美しく整えてくれる心地よい日常着”になっていくでしょう。

苦しくない着付けは、自分を大切にする時間。
自分で着られる着物は、あなたの毎日を豊かにする力を持っています。

どうぞ、あなたらしい心地よい着物時間を、ゆっくり育てていってください。