「着物が好き」と言える勇気

着物着付け教室福岡　　麗和塾　　内村圭です。

「最近、着物に興味があるんです」——。
この言葉を口にすることは、思いのほか大きな意味を持ちます。たった一言であっても、それはご自身の心にそっと灯りをともすような行為です。興味を抱いていること、憧れていることを声に出すというのは、決して小さなことではありません。たとえ少し照れくさくても、勇気がいることであっても、その言葉には、ご自身の未来を動かす力があるのです。

言葉にすることで、心の中にぼんやりとあった思いが、はっきりと輪郭を持ちはじめます。人は、思いを言葉にすることで初めて、その願いを「現実のものにしよう」と意識し始めるもの。だからこそ、「着物が好き」「着てみたい」という一言を自分自身に許してあげることが大切なのです。

中には、「こんなこと言ってもいいのかな」「私なんて着物が似合うタイプじゃないし…」と、不安や遠慮の気持ちが先に立つ方もいらっしゃるかもしれません。でも、そんなふうに自分を比べたり、押し込めたりしてしまうと、本来のご自身の魅力や可能性まで閉じ込めてしまうことになります。

「私なんて」と誰かと比べるのではなく、「私らしく着物を楽しみたい」と思える心を大切にしてほしいのです。着物は、着る人の体を優しく包みこみ、その人らしさを引き立て、時には癒やしとなって、また新しい自分へと背中を押してくれるものです。

着物はただ美しいだけではありません。本当に美しいのは、それを“身に纏ったとき”です。どんなに素敵な反物でも、箪笥の中で眠っているだけでは、その本当の輝きを発揮することはできません。着物は着る人と出会い、身体に馴染んでこそ、初めてその存在感を放ちます。

そして不思議なことに、着る人もまた、着物を通じて輝きを増していきます。お顔立ちや姿勢、そして佇まいにまで変化が表れるのです。それは、外見の変化だけでなく、内面の変化が自然とにじみ出るからなのかもしれません。

素敵な着物姿には、ひとりひとりに異なるストーリーがあります。その人がどんなきっかけで着物に出会い、どんな想いで袖を通したのか。その過程がそのまま、着姿に深みと魅力を加えていくのです。

たとえば、人生の大きな転機や喜びの場面に着物を選んだ人がいます。あるいは、日常のなかのささやかな決意のしるしとして、着物を手に取った人もいるでしょう。どんな小さなきっかけでも、着物と心が結びついた瞬間から、それはその人だけの物語になります。

そしてその物語は、大きな幸せへと繋がっていく前に、必ず小さな喜びを積み重ねています。小さな「やってみたい」を拾い上げ、小さな一歩を踏み出す。その連続が、やがて人生の大きな扉を開くのです。

「着物が欲しいな」と思ったとき、それをただの夢で終わらせるのではなく、そのために必要な行動を始めてみる。少しの時間を見つけて着付けを学んだり、似合う柄を探してみたり、小物に目を向けてみたり……。それはどれも、未来の自分に向けた優しい投資です。

時には、「でも自分には無理かも」と感じることもあるかもしれません。「難しそう」「ハードルが高い」と、つい後ろ向きな気持ちになることもあるでしょう。

そんな時に、ぜひ思い出していただきたい言葉があります。あの国民的アニメの主人公、ドラえもんの名言です。

「できないって、やってみたの？」
「無理だって、努力したの？」

とてもシンプルな言葉ですが、私たちの背中をそっと押してくれるような力があります。挑戦する前から諦めるのではなく、まずは一歩踏み出してみること。その積み重ねが、自信や楽しさにつながっていくのです。

着物の世界は奥深く、知れば知るほど面白く、美しさに魅了されるものです。そしてそれは、特別な人だけのものではありません。誰にでも開かれていて、あなた自身の「着物物語」も、ここから始めることができるのです。

ぜひその第一歩として、「最近、着物に興味があるんです」と口にしてみてください。あなたのそのひと言から、新しいご縁や出会い、学びや喜びがきっと広がっていくことでしょう。