着物姿が育む自信と美しさ

着物着付け教室福岡  麗和塾  内村圭です。

褒められる機会が増える着物姿

着物を身にまとうと、不思議なことに人から声をかけられる機会が増えます。
「素敵ですね」「よくお似合いですよ」「とても良いですね」――。
日常の洋服ではなかなかかけられないような言葉を、着物姿になると自然といただけるものです。着物が持つ特別感や、凛とした雰囲気が周囲の目を惹き、心からの感想を引き出すのでしょう。

しかし、いざ褒め言葉をいただいたとき、私たちはどのように応じているでしょうか。素直に「ありがとうございます」と受け止められる方もいれば、つい「いえいえ、そんなことありません」と謙遜してしまう方も少なくありません。日本人は謙虚さを美徳とする文化に生きているため、褒められることに慣れておらず、喜びよりも戸惑いが先に立つことさえあります。

 

私自身もかつては、褒められると反射的に自分を否定するような言葉を返してしまった経験があります。
「全然たいしたことないですよ」「私なんて不器用で…」と、自虐を交えた返答をしてしまうのです。相手は善意で褒めてくださっているのに、それを打ち消してしまうような返事は、結果として相手を戸惑わせることになります。せっかくの温かなやりとりが、気まずい空気に変わってしまうこともあるでしょう。

謙虚であろうとする気持ちは尊いものですが、行き過ぎると自分を低く見積もりすぎてしまいます。そうすると、せっかくの褒め言葉の力を自分の成長や喜びに結びつけることができません。

褒められるということは、相手がこちらの良いところを見つけ、言葉にして伝えてくれたということです。時には自分では気づいていなかった魅力を、他者の視点によって教えてもらえることもあります。これは大変ありがたいことです。

例えば、自分では「この柄は派手すぎるかも」と感じていた着物が、他の人には「華やかで素敵」と映るかもしれません。あるいは「衿合わせが上手ですね」といった言葉で、自分の努力がきちんと周囲に伝わっていることを知ることもあるでしょう。こうした気づきは、自分の美しさや魅力を客観的に再確認するきっかけとなります。

褒め言葉は、単なるお世辞ではなく、自分自身を新しい角度から照らしてくれる大切な贈り物なのです。

嬉しい言葉をいただいたとき、その喜びを素直に受け入れてみましょう。すると、心の中に小さな光が灯るように感じられます。その光はやがて自信となり、表情や仕草にも表れます。笑顔が柔らかくなり、姿勢が自然と整い、着物姿全体がよりいっそう輝いて見えるのです。

「素敵ですね」と言われたら、「ありがとうございます」と受け止め、その言葉を心にしまっておきましょう。すると「次は今日よりももっと美しく着こなしたい」という意欲が湧き、着物を着ることそのものが楽しみになります。努力を重ねる過程で、ますます魅力的な姿へと磨かれていくのです。

もしも「私なんて」と否定してしまえば、その瞬間に褒め言葉の力は消えてしまいます。そればかりか、相手に「褒めてはいけなかったのかな」と不安を与えてしまうこともあります。せっかくの良い循環を、自ら断ち切ってしまうのは惜しいことです。

褒め言葉を受け取ることは、自分の成長を肯定し、さらに前に進むためのエネルギーを得ることに他なりません。心からの「ありがとうございます」の一言が、相手との関係も円滑にし、互いに気持ちの良いやりとりを生み出してくれます。

着物は単なる衣服ではなく、着る人の内面までも映し出すものです。褒め言葉を受け取ることで自信が生まれ、その自信がさらに美しさを引き立てる――この循環は、人生そのものを豊かにしてくれる力を持っています。

「今日のあなたは素敵ですね」という一言が、明日の自分をもっと輝かせるきっかけとなるのです。だからこそ、褒められたときは謙遜しすぎず、心から感謝して受け止めましょう。その小さな積み重ねが、着物姿だけでなく、自分らしい生き方そのものを輝かせてくれるのです。

着物を着ると、人から褒められる機会が増えます。その言葉を否定せず、素直に受け入れることは、自分の魅力に気づき、さらに磨いていくための大切なステップです。褒め言葉は、自分では見えない角度からの新しい発見を与えてくれる贈り物。心に蓄えて自信に変えていくことで、内面も外見も輝きを増し、人生をより豊かにしてくれるでしょう。

どうか、褒め言葉をありがたいものとして受け取り、ご自身の成長や美しさにつなげてみてください。着物姿が、そしてあなた自身が、ますます輝きを放つことを願っています。