年齢を重ねるほど美しい着物姿

着付け教室福岡　　麗和塾　　内村圭です。

私は仕事を含め、着物を着る機会が比較的多い生活を送っていますが、実は「毎日着物」というわけではありません。洋服も普通に着ますし、TPOに合わせて装いを選ぶ柔軟さも大切にしています。ただ、日常の中で着物と洋服を行き来する生活を続けていると、年齢を重ねるほどに「着物を好きでよかったな」としみじみ感じる瞬間が増えてきました。

最近の洋服はオーバーサイズが主流で、体型をやわらかく包み込んでくれるアイテムが多く、私も助けられています。しかし、ファッションの流行はいつの時代も移りゆくもの。近いうちに、もしかしたら再びタイトなラインが流行するのでは……と、内心ヒヤヒヤしている自分もいます。そうした場面で思うのです。「着物という選択肢があって、本当に良かった」と。

着物は流行に振り回されることがありません。数年で価値が下がることもなく、むしろ大切に扱えば扱うほど、布に宿る美しさや風合いが増す、特別な衣服です。洋服のように「流行遅れ」という概念がないからこそ、長い期間にわたり寄り添い続けてくれます。十年、二十年、三十年……。時代や年齢を超えて、変わらない魅力を放ち続ける存在なのです。

私自身、手持ちの洋服より着物の数の方が多いくらいで、朝の支度の際も、着物のコーディネートの方がむしろ楽に感じることがあります。帯や小物の組み合わせ次第で印象を自在に変えられ、気分に合わせて装いを楽しめる。さらには流行の移ろいから解放される安心感がある──この自由さは、洋服ではなかなか得られないものです。

着物はサステイナブルな衣服としての側面も持ち合わせています。仕立て直しやお直しによって寸法を変えることができ、代々受け継がれていくことも珍しくありません。流行り廃りがなく、長期間着られ、傷んだ部分は補修ができる。この持続可能性は、現代社会の価値観にも合致しています。着れば着るほど愛着が湧き、未来へつなぐ一着となる──まさに「別格」と呼ぶにふさわしい衣服です。

そして、着物が持つ大きな魅力のひとつに、「体型を美しく見せてくれる」力があります。妙齢になると、若い頃のように体のラインが自然と引き締まっているわけではなく、少しずつ変化していきます。肌の艶も若い頃ほどではないかもしれません。しかし、着物にはそのすべてをやわらかく包み込み、整え、上品に見せてくれる不思議な力があります。

体型が変わっても気にせず楽しめる。年齢を重ねても、むしろその「今の自分」が最も美しく映える。そんな魔法のような魅力が着物にはあるのです。

私自身、若い頃よりも褒められる機会が増えたと感じることがあります。若々しさで勝負する年齢ではなくなったからこそ、着物の持つ奥ゆかしい美しさと、自分自身の落ち着きが合わさり、装いとしての完成度が高まってきたのでしょう。「ああ、着物が似合う年齢になってきたのだな」と思うと、年齢を重ねることが愛おしくすら感じられます。

「そろそろ着物を着てみたい」と思っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ暮らしの中に着物を取り入れてみてください。「特別な日」「かしこまった場」だけではもったいないのです。普段の生活にこそ、着物の良さは活きてきます。

たとえば、休日のお出かけや、友人とのランチ、美術館巡り、カフェでのひととき。そんな何気ない時間に着物を纏うだけで、心がすっと整い、いつもの日常が少しだけ豊かに見えてきます。

着物は、単なる衣服ではありません。自分を丁寧に扱い、年齢を重ねた自分自身を愛おしく感じさせてくれる存在です。「今の私が一番好き」と思える瞬間を増やしてくれる、人生の味方なのです。

これまで着物に興味はありながらも、一歩踏み出せずにいた方。もし心のどこかに小さな火が灯っているのであれば、その火を消さず、そっと育ててみませんか。着物はあなたに寄り添い、今のあなたをさらに輝かせてくれるはずです。