心地よい着物生活

着物着付け教室  麗和塾  内村圭です。

皆さまは、大切な着物のお手入れをされていますか?

お気に入りの着物や、お母さま、お祖母さまから受け継いだ思い出の着物。いつでも気持ちよく袖を通せるように、日頃から保管方法に気を配っておきたいものです。

着物は、着るときだけでなく、着ていないときのお手入れも大切です。

特に、絹の着物は湿気の影響を受けやすく、保管環境によってはカビが発生することがあります。せっかく大切に保管していても、いざ着ようと思ったときにカビやシミを見つけてしまったら、とても残念ですよね。

そこで今回は、大切な着物を長く美しく保つために知っておきたい、虫干しと湿気対策についてです。

絹の着物は、湿気に気を配りましょう

絹の着物は、しなやかな風合いと美しい光沢が魅力です。肌触りもよく、身にまとうと自然な落ち感が生まれ、上品な着姿を演出してくれます。

一方で、絹の着物を保管する際には、湿気に注意する必要があります。

着物は仕立てや加工の工程で糊などが使われることがあり、保管環境によってはカビが発生する原因になります。特に、湿度の高い場所や、長期間空気が入れ替わらない場所では注意が必要です。

日本には梅雨があり、夏場も湿度が高くなります。タンスの中にしまっているから安心、というわけではありません。

見た目には何も変化がないようでも、長い間着物を出さずにいると、湿気がこもってしまうことがあります。

大切な着物を守るためには、湿気をため込まない環境を整え、定期的に状態を確認することが大切です。

 

 

 

昔から伝わる着物のお手入れ「虫干し」

着物のお手入れとして、昔から行われてきた習慣に「虫干し」があります。

虫干しとは、着物を風に当てて湿気を逃がし、保管中の状態を確認するためのお手入れです。

代表的なものに「寒干し」と「土用干し」「虫干し」があります。

寒干しは、11月末から2月頃の、空気が乾燥した晴天の日に行うお手入れです。

冬の乾燥した時季は、着物にこもった湿気を逃がす機会になります。よく晴れて空気が乾いている日を選び、着物を衣紋掛けなどに掛けて風を通します。

ただし、冬であっても雨の後や湿度の高い日は避け、天候や室内の湿度を確認して行いましょう。

土用干しは、梅雨明け後の7月末頃から、晴れて乾燥した日を選んで行うお手入れです。

梅雨の間は湿度が高く、タンスの中にも湿気がこもりやすくなります。そのため、梅雨明け後の乾燥した日には、着物の状態を確認しながら湿気を逃がすことが大切です。

昔から、季節の変わり目に着物を干す習慣が受け継がれてきたのは、大切な衣類を長く使うための知恵でもあったのでしょう。

なお、寒干しや土用干しは、必ず決まった日に行わなければならないものではありません。季節を目安にしながら、実際の天候や湿度に合わせて無理なく取り入れてみてください。

虫干しをするときに気を付けたいこと

虫干しをする際は、着物を直射日光に当てるのではなく、風通しのよい室内で陰干しするのが基本です。

強い日差しは、着物の色あせや生地への負担につながることがあるため、避けましょう。

また、着物を衣紋掛けに掛ける前に、畳紙から取り出して状態を確認しておくと安心です。

シミや変色、カビらしきものがないか、衿や袖口、裾なども丁寧に見ておきましょう。

虫干しは、単に湿気を逃がすだけでなく、普段は目にすることの少ない着物を点検するよい機会にもなります。

帯や長襦袢、小物類も、素材や保管方法に応じて状態を確認しておくとよいでしょう。

ただし、カビが発生している場合は、無理に払ったり、ほかの着物と一緒に扱ったりせず、専門のお手入れ先に相談することをおすすめします。

大切なのは、問題が起きてから慌てるのではなく、日頃から着物の状態を把握しておくことです。

忙しい方は、タンスの引き出しを開けることから

「虫干しが大切なのは分かっているけれど、着物を全部出して衣紋掛けに掛けるのは大変!」

そのように感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

着物を一枚ずつ取り出し、広げて風を通し、畳み直すとなると、時間も手間もかかります。忙しい毎日の中で、なかなか実行できないこともあるでしょう。

そのようなときは、まずできることから始めてみませんか?

例えば、天気のよい乾燥した日に、和タンスの引き出しを開けて空気を入れ替えるだけでも、日頃のお手入れのきっかけになります。

引き出しを開ける際は、室内の湿度にも気を配りましょう。外の空気が湿っている日には、かえって湿気を取り込んでしまうことがあります。

また、タンスを置く場所も大切です。壁に密着させすぎず、湿気がこもりにくい環境を整え、必要に応じて除湿剤なども活用しましょう。

ただし、引き出しを開けるだけでは、着物全体に十分な風を通せるとは限りません。時間に余裕のあるときには、実際に着物を取り出して状態を確認し、陰干しすることをおすすめします。

最初から完璧に行おうとすると、負担に感じてしまいます。

まずは引き出しを開ける。次は一枚だけ取り出して確認する。

そんな小さな習慣から始めてみるのもよいですね。

クリーニングから戻った着物にもひと工夫

もうひとつ、気を付けていただきたいことがあります。

それは、クリーニングから戻ってきた着物の保管方法です。

着物がビニール袋に入って戻ってきた場合は、保管する前にビニール袋を外しましょう。

ビニール袋は、持ち帰る際の汚れ防止などには便利ですが、そのまま長期間保管するためのものではありません。

袋の中に湿気がこもることもあるため、着物の状態を確認したうえで、十分に乾いていることを確かめ、適切な方法で保管することが大切です。

着物を包む際には、通気性に配慮した専用の保管用品を使用し、湿度の高い場所を避けて保管しましょう。

また、クリーニング後であっても、保管環境によってはカビなどのトラブルが起こる可能性があります。

きれいになって戻ってきたからといって、そのまま何年も安心してしまい込むのではなく、ときどき状態を確認してあげてくださいね。

いつでも着られる喜びのために

着物は、袖を通してこそ、その魅力を存分に楽しめるものです。

久しぶりに着物を着ようと思ったとき、タンスを開けてお気に入りの一枚を取り出す。そして、きれいな状態の着物に気持ちよく袖を通す。

そんな何気ない時間も、着物を楽しむ喜びのひとつではないでしょうか。

大切な着物を長く着続けるためには、特別な道具をそろえたり、難しいことをしたりする必要はありません。

季節ごとに湿気を意識すること。晴れた乾燥した日に風を通すこと。保管前に状態を確認すること。そして、無理のない範囲でお手入れを続けること。

こうした小さな積み重ねが、大切な着物を守ることにつながります。

受け継いだ着物も、思い切って購入したお気に入りの着物も、できるだけ長く美しい状態で楽しみたいものですね。

着物のお手入れは、少し面倒に感じることもあるかもしれません。しかし、そのひと手間が、次に着物を着る日の楽しみにつながります。

「今日は何を着ようかしら?」
「この帯を合わせたら、どんな雰囲気になるかしら?」

そんなふうに、タンスを開けることが楽しみになるような着物生活を送りたいですね。

皆さまも、まずは次の晴れた乾燥した日に、タンスの中の着物を確認することから始めてみませんか?

大切な着物を、いつでも気持ちよく着られるように。

ほんの少しの手間をかけながら、これからも豊かな着物時間を楽しんでいきましょう。