自分らしさが輝く着物レベルアップの秘訣
着物着付け教室 麗和塾 内村圭です。
せっかく着物を着るのであれば、ただ「着られた」だけで終わらせるのは、少しもったいないことかもしれません。いくつかのコツを知り、意識を向けるだけで、着物姿は驚くほど洗練され、いわば“レベルアップ”が叶います。着物は難しいもの、堅苦しいものと思われがちですが、本来は、着る人自身を美しく引き立ててくれる、懐の深い装いなのです。
着物は日本の伝統衣装でありながら、不思議と現代の感覚にもよくなじみます。時代を超えて受け継がれてきた理由は、単なる様式美だけではなく、人の身体や所作を美しく見せるための知恵が、随所に込められているからでしょう。洋服が身体を立体的にとらえ、メリハリや曲線美を強調するのに対し、着物はあえて身体を平面的に、なだらかに整えることで美しさを引き出します。そのため、凹凸を抑え、縦のラインを意識した着姿のほうが、着崩れしにくく、着物本来の魅力が際立つのです。

着物は一見ゆったりしているようでいて、実はとても“縦ライン”を強調する装いです。帯から裾へと続く直線的なラインは、想像以上に全身をすっきりと見せてくれます。だからこそ、せっかく着るのであれば、自分の短所をさりげなくカバーし、長所を活かした、自分らしい着姿を目指したいものです。他人と比べる必要はありません。大切なのは、「自分がどう在りたいか」「どんな雰囲気を纏いたいか」を知ることです。
忘れてはならないのは、着物姿の主役は、着物そのものでも、帯でもなく、着ている“あなた自身”だということです。どれほど上質な着物や帯を身につけていても、着る人の姿勢や表情、所作が伴わなければ、その魅力は十分に発揮されません。反対に、少しの工夫と意識があれば、特別に高価な着物でなくても、凛とした美しい着姿は生まれます。
では、着物姿をレベルアップさせるためには、どのような点を意識すればよいのでしょうか。まず大切なのが、「補整」です。着物は平面の布からできているため、身体の足りない部分を適度に補い、凹凸をなだらかに整えることで、驚くほど安定した着姿になります。補整は、決して体型を隠すためのものではなく、着物を美しく着るための下準備です。自分の体型を知り、必要なところに必要な分だけ補うことが、着崩れ防止にもつながります。
次に意識したいのが、姿勢です。首の位置が正しく、背筋がすっと伸びた姿勢は、それだけで着物姿を格上げしてくれます。着物は洋服以上に姿勢が表に出る装いです。無理に胸を張る必要はありませんが、頭のてっぺんから糸で引かれているような感覚で立つだけで、印象は大きく変わります。姿勢が整うと、自然と呼吸も深くなり、心まで落ち着いてくるのを感じられるでしょう。
そして三つ目が、所作です。着物姿を美しく見せるのは、止まっているときだけではありません。歩く、座る、物を取るといった日常の動作の中にこそ、その人らしさが表れます。袖の扱い方や、歩幅を少し控えめにする意識、帯を背負っている感覚を忘れないこと。それだけで、所作は自然と上品になります。完璧を目指す必要はありませんが、「着物を着ている自分」をほんの少し意識するだけで、動きは見違えるほど変わります。
着物姿のレベルアップは、着付けの技術だけで完結するものではありません。補整、姿勢、所作――これらが一体となってこそ、着物はその人の一部となり、自然な美しさを放ちます。難しく考えすぎず、一つひとつを楽しみながら身につけていくことで、“着物時間”はより豊かで心地よいものになるでしょう。
着物は、あなたを縛るものではなく、あなた自身を引き立てるための装いです。ぜひコツを味方につけて、自分らしい着物姿を育ててください。そうして重ねた一つひとつの経験が、着物と過ごす時間を、かけがえのないものへと導いてくれるはずです。

