着物がもたらすアンチエイジング効果

着物着付け教室  麗和塾  内村圭です。

着物には、実は「アンチエイジング効果」があると思います。これは決して大げさな表現ではなく、日々着物を楽しんでいる方々と接していると、自然と実感できることでもあります。着物好きの諸先輩方とご一緒していると、年齢を重ねてもなお活動的で、生き生きとした方が多く、その姿に思わず尊敬の念を抱いてしまいます。表情が明るく、姿勢が良く、行動力もあり、「年齢」という言葉から連想されるイメージとは良い意味でかけ離れている方ばかりなのです。

その理由のひとつが、着物ならではの身体の使い方にあります。着物を着るときには、帯を結ぶ、衿元を整える、裾をさばくなど、自然と指先を使う動作が増えます。また、姿勢や歩き方も洋服のときとは異なり、背筋を伸ばし、歩幅を控えめにして、身体の軸を意識するようになります。こうした一つひとつの動作が、無意識のうちに身体全体を整えることにつながっているのです。

特に注目したいのは、着物を着ることで使われる筋肉の違いです。洋服のときにはあまり意識しない体幹や内側の筋肉を、着物では自然と使うようになります。帯を締めることでお腹周りが安定し、背中や腰、下腹部にほどよく力が入り、姿勢を保とうとするだけで体幹トレーニングのような状態になります。和の動作はゆっくりで無駄がなく、一見すると運動量が少ないように見えますが、実はインナーマッスルをしっかり刺激しているのです。

着物を着慣れていない方の場合、背中やすね、下腹など、普段あまり使わない筋肉を使うため、翌日に筋肉痛になることもあります。「そんなに動いていないのに、なぜか身体が痛い」と驚かれる方も多いですが、それだけ日常とは異なる筋肉を使っている証拠でもあります。無理な運動をしなくても、着物を着て過ごすだけで、自然と身体を鍛えることができるという点は、まさにアンチエイジングの観点から見ても大きな魅力と言えるでしょう。

さらに、着物の効果は身体面だけにとどまりません。精神面、つまり「心」にも大きな変化をもたらします。着物を着ていると、不思議と人との距離が縮まりやすくなり、話しかけられたり、自分から話しかけたりする機会が増えるように感じます。実際、私自身の経験としても、着物を着ているときの方が、いつもより社交的になっていると感じることが多くあります。

知らない人に話しかけられても、自然と笑顔で応じることができたり、反対に自分から「こんにちは」と声をかけてみたりと、普段よりもオープンな気持ちになるのです。着物という存在そのものが会話のきっかけになり、「素敵ですね」「どちらでお求めになったのですか」など、何気ない一言から会話が広がることも少なくありません。その結果、初対面の人とも自然と会話が弾み、心がほぐれていくのを感じます。

また、着物を着ていると行動そのものも変わってきます。たとえば、いつもなら用事が済んだらすぐに帰宅してしまうところを、「せっかく着物を着ているから、もう少し外出を楽しんでみよう」と、足を伸ばしてカフェに立ち寄ったり、散歩をしてみたりすることがあります。着物を着ているというだけで、日常の行動に「楽しむ」という要素が加わり、生活に小さな彩りが生まれるのです。

さらに、「着物で行きたい場所」をあらかじめピックアップしておくと、外出の楽しみは一層広がります。一人で静かに美術館を訪れたり、お友達を誘って和菓子屋さんやお寺巡りをしたりと、着物を軸にした行動計画が自然と増えていきます。そうして行動範囲が広がることで、新しい景色に触れ、新しい人と出会い、新しい経験を積み重ねていくことになります。

このように、着物は単なる「衣服」ではなく、心と身体の両方に働きかける存在です。身体的には、姿勢改善や体幹強化、筋肉の活性化といった効果が期待でき、精神的には、社交性の向上や行動力の増加、気持ちの前向きさにつながります。これらが組み合わさることで、結果的に「若々しさ」が保たれ、アンチエイジングにつながっていくのです。

着物を着ることで、自分自身の動きや表情、考え方までもが少しずつ変わっていく。その変化は決して劇的なものではありませんが、日々の積み重ねによって、確実に心身に良い影響を与えてくれます。着物は、活動的で社交的な自分へと導いてくれる、いわば「和のライフスタイルツール」とも言える存在です。

年齢を重ねることを「衰え」と捉えるのではなく、「深まり」として受け止めながら、着物とともに過ごす時間を大切にする。そうした生き方そのものが、自然体でのアンチエイジングにつながり、内側から輝く若々しさを育んでくれるのではないでしょうか。着物は、私たちに心地よい緊張感と楽しさ、そして新しい自分との出会いを与えてくれる、かけがえのない存在なのです。