着物と日本の美意識

着付け教室福岡 麗和塾 内村圭です。

 

日本の着物には、四季折々の花が豊かに描かれています。これらの花々は、単に美しさを象徴するだけでなく、その散り際までもが繊細に表現され、日本人の感性の深さを物語っています。

桜は「散る」、梅は「こぼれる」、菊は「舞う」、椿は「落ちる」、雪柳は「吹雪く」、牡丹は「崩れる」――それぞれの花が命を終える瞬間の言葉には、日本ならではの詩情が込められています。花の命は儚く、その移り変わりが季節の巡りを知らせてくれます。

 

 

着物に花の柄を選ぶ際には、季節の先取りが粋とされます。咲き始めの「走り」の時期に身にまとうことで、先を見通す美意識が表現されます。一方で、満開の「盛り」の時期に同じ花を着ることは、花と競うことになり、野暮とされるのです。しかし、四季折々の花を纏うことで、来年もまたその先も、巡る季節を感じながら着物を楽しむことができます。

花を眺めるだけでも心が癒されますが、その花の柄を身に纏うことで、さらに特別な喜びを味わえます。花は決して自らの咲く時期を誤らず、自然の流れの中でその役割を果たします。私たちもまた、季節を感じながら、その時々の美しさを大切にして生きていきたいものです。

これから気温が安定して、着物を楽しむ機会も増えていきます。新しい季節を迎える準備をしながら、今できることを大切に、人生にひと花咲かせてみませんか?