忙しさに流されない生き方と着物時間の大切さ
着物着付け教室福岡 麗和塾 内村圭です。
日々の生活の中で、「時間がない」「忙しくて余裕がない」と感じながら過ごしてはいませんか。仕事、家事、育児、家族の予定――たしかに毎日は慌ただしく、やるべきことは次々とやってきます。しかし、忙しさに追われるまま過ごしていると、心のゆとりが少しずつ削られてしまうことがあります。「忙しい」という言葉は、“心”を“亡くす”と書きますが、まさにその通りで、その言葉を口にしているだけで気持ちがさらに慌ただしく、焦りを引き寄せてしまうように感じることもあるでしょう。
だからこそ、限りある大切な“時間”を、ただ振り回されるものではなく、自分で上手に扱い、コントロールできるようになりたいものです。時間は目に見えず触れられないものですが、使い方ひとつで人生の質が大きく変わります。毎日がどれほど忙しくても、一日の中に小さな余白をつくり、「自分のための時間」を意識して確保することは、心の健康にも、人生の豊かさにもつながっていきます。
着物も同じです。「忙しいから」と理由をつけて後回しにしてしまうと、着物を着る機会は自然と減っていきます。やがて、「本当は着たかったのに」という気持ちが残り、後悔につながってしまうこともあるでしょう。だからこそ、先に思い切って「着物を着る日」を決めてしまうことが大切なのです。予定として組み込むことで、そこに向けて心も行動も整い、忙しさの中でも無理なく着物時間を確保できるようになります。

かつての私も、「今日は時間がないから」と自分に言い聞かせ、着物を諦めたことがありました。しかし、同じ席にいた着物姿の方を目にした瞬間、胸の奥に強い後悔が湧き上がりました。「やっぱり私も着ればよかった……」――その気持ちが忘れられず、私はその日以来、「着物時間をちゃんと確保しよう」と心に誓いました。忙しさを理由にやりたいことを諦めてしまうと、その悔しさは案外長く残るものです。だからこそ、先に決めて行動することの大切さを、身をもって学んだのです。
時間とは、人生そのものです。誰にとっても平等に与えられるものでありながら、その使い方によって人生の彩りや充実度は大きく変わっていきます。「時間は命」という言葉がありますが、それほどまでに、時間は私たちにとって大切な資源なのです。だからこそ、一瞬一瞬をただ流されるのではなく、自分の意思で選び取りたいもの。どのように時間を使うかを意識することは、自分自身の生き方を大切にすることにもつながります。
忙しさを嘆くのではなく、「たくさんやることがあるのは充実している証」と前向きに捉えることも、心を軽くしてくれます。もちろん無理をする必要はありませんが、「どう時間を使うか」を主体的に考えることで、忙しい中にも余裕が生まれます。自分が主導権を持ち、予定を選び、時間を紡いでいくことで、日々が慌ただしさだけで終わらず、充実した流れへと変わっていくのです。
着物を着るという行為は、単なる“装い”ではなく、まさに時間の使い方を見つめ直すきっかけにもなります。帯を締めるひととき、鏡の前で姿勢を整える瞬間、丁寧に選んだ小物を身に付ける時間――そのすべてが、慌ただしい毎日の中に落ち着きや自分らしさを取り戻す大切な時間となります。
時間を味方につけることは、自分の人生を丁寧に積み重ねていくことにほかなりません。忙しい日々の中でも、自分の心が満たされ、豊かさを感じられるような時間の使い方を選んでいきましょう。そして、「着物を着る」という選択が、あなたにとって心の軸を取り戻す一歩になることを願っています。


