「着物を着る時間」

着物着付け教室福岡 麗和塾 内村圭です。

 

 

着物を着ていると、よく聞かれる質問のひとつに「ご自分で着ているのですか?」というものがあります。そして、次に多いのが「着るのにどのくらい時間がかかるの?」という質問です。

興味を持ってくださる方の視点はさまざまですが、特に「所要時間」に関心を持つ方が多いようです。確かに、日常的に着物を着る習慣がない方にとっては、時間がかかることがハードルに感じられるのかもしれません。

着物は「習うより慣れろ」——経験が時間を縮める

「着物は習うより慣れろ」とよく言われるように、繰り返し着ることで次第に所要時間は短縮されます。最初は手順を覚えることに時間がかかるものの、慣れてくると無駄な動きが減り、スムーズに着付けができるようになります。

また、経験を積むことで、**「着る時間が負担ではなくなる」**という感覚も芽生えてきます。最初は「大変そう」と思っていた時間が、むしろ心を整えるための大切な時間に変わるのです。

 

 

着物を着る時間をどう捉えるか?

着物を着る時間を「面倒な時間」「無駄な時間」と捉えるか、それとも「自分を整える時間」「心豊かに過ごす時間」と捉えるかで、着物の定着度は大きく変わります。

たとえば、朝の支度のひとときを「忙しなく服を着る時間」とするのか、「ゆったりと着物を整える時間」とするのか。考え方次第で、その時間の価値はまったく異なるものになります。

着物を着る時間は、自分自身と向き合い、心を落ち着かせるひととき。手を動かしながら、自然と姿勢が正され、気持ちが引き締まる——そんな時間を味わうことができるのです。

洋服と着物は、時間の概念が異なる

「着物を着るのにどのくらい時間がかかるの?」と聞かれると、多くの方は洋服を着る時間と比較しているのかもしれません。しかし、洋服と着物では、そもそも時間の概念が異なります。

洋服は、日常の延長として「さっと着替える」もの。

一方、着物は「身支度を整える」という意味合いが強く、衣服を纏う行為そのものに価値があるものです。

そのため、洋服と同じ時間感覚で考えず、「非日常の時間」として向き合うことが大切です。

焦らず、自分のペースで着付けを楽しむ

着物を着る時間は、人それぞれ異なります。慣れていくうちに自然と早くなりますが、最初から時間を気にしすぎる必要はありません。

大切なのは、「焦らず、自分のペースでベストな時間配分を見つけること」。

毎回少しずつ自己ベストを更新しながら、自分にとって心地よい着付けの時間を確立していくことが、着物を長く楽しむ秘訣です。

「何分で着られるか」ではなく、「どれだけ心地よく着られるか」。

そんな風に捉えられるようになれば、着物を着る時間は、より豊かで充実したものになるでしょう。