譲り受けた着物を着る前に確認するポイント
着物着付け教室福岡 麗和塾 内村圭です。
「せっかく譲り受けた着物、着てみようかな?」――そんな気持ちが芽生えたら、まずは着物の状態をチェックすることから始めましょう。譲り受けた着物は、自分の体にぴったり合うとは限りません。そのため、快適に美しく着こなすためには、サイズや状態の確認が必要です。
1. サイズの確認が最優先
譲り受けた着物は、元々自分のために仕立てられたものではないため、サイズが合っているかを確認することが大切です。着物の着姿を美しく見せるためには、以下の3つのポイントを順番にチェックしましょう。
①裄(ゆき)
裄とは、首の付け根から肩を通り、手首までの長さを指します。着物の袖が短すぎると、手首が大きく出てしまい、不格好に見えてしまいます。裄が短い場合は、お直しを検討するとよいでしょう。比較的安価にお直しできるうえ、見た目の印象も大きく変わるため、サイズ調整の中でも特におすすめです。
②身丈(みたけ)
身丈とは、着物の全体の長さのことです。目安としては、自分の身長に対して±5cm以内であれば、許容範囲とされています。ただし、体格によってはもう少し長さの調整が必要な場合もあるため、実際に羽織って確認してみることをおすすめします。
③身幅(みはば)
身幅とは、着物の胴回りのサイズを指します。身幅が少し大きくても、小さくても、着付けの工夫によってある程度調整することが可能です。そのため、裄や身丈に比べると、身幅の誤差はそこまで気にしなくても大丈夫です。
このように、サイズ確認をする際は「裄 → 身丈 → 身幅」の順番でチェックすると、よりスムーズに問題点を把握することができます。
2. 着物の状態をチェック
サイズの確認が終わったら、次に着物の状態をしっかりとチェックしましょう。特に、長期間保管されていた着物には、以下のようなトラブルが見られることがあります。
①シミや汚れの有無
着物は繊細な生地でできているため、保管環境によってはシミや黄ばみが発生していることがあります。特に、襟元や袖口、裾部分は汚れがつきやすい箇所なので、念入りに確認しましょう。軽い汚れであれば、専門のクリーニング店で落とせる場合もありますが、古いシミは完全に取り除くのが難しいこともあります。そのため、シミの状態によっては、目立たない部分を利用する仕立て直しを検討するとよいでしょう。
②カビや異臭がないか
長期間保管されていた着物には、カビが発生していたり、特有の保管臭が染みついていたりすることがあります。カビの有無は、生地の表面に白や黒の点々がないかを確認してください。異臭がする場合は、風通しの良い場所に干すことである程度軽減されますが、状態がひどい場合は専門のクリーニングに出すことをおすすめします。
③糸のほつれや生地の劣化
着物の縫い目がほつれていないか、生地が弱くなっていないかも確認しましょう。特に、袖付けや衿の部分は摩擦が多いため、糸がほつれやすい箇所です。ほつれが見つかった場合は、早めに修理しておくことで、長く愛用できるようになります。
3. まずは試着してみる
サイズや状態の確認が終わったら、実際に試着してみましょう。着物は平面の布を体に巻き付けるように着るため、多少のサイズ違いであれば着付け次第で調整できます。しかし、どうしても着にくい場合や違和感を感じる場合は、専門の着付け師に相談するのも一つの方法です。
4. 必要に応じてお直しをする
試着してみてサイズが合わないと感じた場合、必要に応じてお直しを検討しましょう。特に、「裄のお直し」は比較的費用も抑えられ、着姿が美しくなるためおすすめです。また、身丈が長すぎる場合は「対丈(ついたけ)」で着ることで対応できる場合もあります。
譲り受けた着物を着る際には、サイズや状態のチェックが欠かせません。「裄・身丈・身幅」の順でサイズを確認し、シミや汚れ、カビ、糸のほつれなどの状態も細かくチェックしましょう。サイズが多少合わなくても、着付けやお直しで調整できる場合も多いため、まずは試着してみることが大切です。
せっかく譲り受けた大切な着物を、きちんと整えて美しく着こなすことで、新たな思い出を作ることができるでしょう。着物の魅力を存分に楽しむために、ぜひ一つひとつ丁寧に確認してみてください。